イコライザー(EQ)について ピンクノイズをまずは押さえよう

今回はミキシング作業の中で、イコライザー(EQ)についての知識をまとめます。

イコライザー(EQ)とは?

イコライザーとは音の周波数を専用のエディターで作業することです。周波数をいじるため、音の質そのものに手を入れる行程です。イコライザーはEqualizer(等しくする)の略で、音の周波数ごとにデータを整えるという意味です。

EQにおいて最も重要なのはピンクノイズ!

イコライザーを学ぶに当たって必ず押さえておきたいのは、イコライザーにはお手本となる周波数の型があるということです。これをピンクノイズと言います。ピンクノイズに合わせることで、誰でも70点とれる(秀才レベル)までにはなります。

注意するべき事として、イコライザー参考本に書いてある数値をそのまま暗記するのでは意味がないということです。具体的に本には楽器ごとにどのようなピッチで調整すればいいのか具体的な数値が書いてありますが、最も重要なピンクノイズが記述されていないことが多く、あてにしてはいけません。例えばクラッシュシンバル。シンバルは多くの種類が存在していますが、イコライザー参考本の多くはクラッシュシンバルはこの数値で設定する、と単純化してしまっています。SoundHouseなどの通販サイトを除くと星の数ほどの種類のシンバル(Splash、チャイナなど)があるので、クラッシュシンバルは一概にこの数値で設定すると丸暗記していては個別の楽器に対応できません。

大事なのは、目を閉じで自分の耳で聴いて判断することです。自分の感性でこれがいい音だっていうのを信じることです。その結果、目で見た数値がいじりすぎているとしても、それでいいと確信を持つことです。

書籍にはEQは控えめに使いましょうと書いてあるが、そんなことはありません。自分の感性と耳を信じて美しく調整すればいいのです。プロもそうしています。

基本はピンクノイズに大まかな周波数を合わせ、自分の目的(理想の音像)に応じてイコライザーでミックス作業していくのが基本です。

例えばハードロックのドンシャリと呼ばれる攻撃的でハイ(高い周波数域)を上げる処置を施す場合もあれば、バラードを作りたい場合は全体的に丸く穏やかに優しく丸みを持たせたい感じにしたいときなどにイコライザーを使います。(自動ミキシングのニュートロンというソフトは主にこうした処理を自動で行ってくれます。)

イコライザーのすべての基本はピンクノイズにあり、まずはピンクノイズに調整してから(70点のサウンドデータを作ってから)、そこを基準とし目標とする音に向けて微調整を重ねていきます。

サウンドエンジニアの世界は秘密主義であり、ピンクノイズが書いてある本はほとんどありません。かつて弟子が師匠の技を見て覚えたように、まずはピンクノイズを知ることがミックスにおいて最重要となります。ピンクノイズに調整してから自分の求めるジャンルの音へ微調整していくことで80点、85点、90点…とクオリティが向上していきます。

すべてのミキシング調整は原則としてピンクノイズを設定した後に行います。

ミキシングしなくても(イコライザーを掛けなくても)良い場合

また、すべての音源をミキシングしなくてもよい場合があることを忘れないようにしましょう。レコーディングエンジニアがピンクノイズのことを理解しており、録音された音がすでにピンクノイズの状態になっていた場合です。この場合何も音をいじらなくてもいいぐらいです。

初心者ほど「なんでもEQをかけて音をいじらなければいけない」と考えてしまいます

ピンクノイズは大体右肩下がりの周波数の形であり、基本的に右肩下がりの波形を目指せばピンクノイズになります。アナライザーなどを使って周波数を可視化して調べましょう。録音の際に、音がきれいにとれたと思うのは、だいたいピンクノイズになっています。

機材やソフトなど

■デジタルで最強のイコライザーはDMG audioのEQuilibriumです。

https://www.dmgaudio.com/products_equilibrium.php

2万円以上しますが、デジタルイコライザーではトップクラスの性能で、ちょっとぐらい無茶な操作をしても音が壊れにくいです(ソフトの方で自動で綺麗に調整してくれる)。

■ミキシングとスピーカー、ヘッドフォンについて
前提としてミキシングはスピーカーで行うものです。ヘッドフォンでするものではありません。でも場所や環境の都合でスピーガーが無い時があります。その時にヘッドフォンを使うのですが、モニター用ヘッドフォンとミキシング用ヘッドフォンで違いがあります。

モニターヘッドフォンで有名なのはSONYのMDR900STです。

音の解像度が一番高い超ロングセラー商品です。ノイズが入っているかどうかの音チェックに使います。ただ、あくまでもチェック用です。低音が出ないので、900STで低音のバランスをとるのは至難の業です。むしろ低音調整は不可能に近く、このヘッドフォンで低音を調整したら、ダンスミュージックなどで音が大きすぎてしまうこともあります。

ミキシングで使う際のヘッドフォンは開放型がよく、密閉型はよくありません

ヘッドフォンはあくまでもその場しのぎで、最終的にはちゃんとスピーカーでよく聞こえるように調整するのが大事です。モニタースピーカーという専用のスピーカーでモニターをするのが一番です。

しかし、音量を上げなくてはならず、日本の住宅事情を考慮するとヘッドフォンになってしまうのも仕方ありません。アナライザーはここでも活躍し、ミックス作業がスピーカーやモニターヘッドフォンで出来ない場合はアナライザーでピンクノイズの形になっているかどうかが判断基準の一つとなります。