マイナーコードをきっかけとした転調

マイナーコードをきっかけとした転調

転調は元のスケールから一歩はみ出した調性外の音を持つコードを渡り廊下にして行うことが出来ます。ここではマイナーコードを転調のきっかけとした際にどういうことを意識すれば良いのかについてまとめました。

本来マイナーでは無いコードをマイナーコードにする

一時的転調で大活躍したセカンダリードミナントは本来V7ではないコードをV7の形にしたものでした。それと同様に、本来マイナーコードでは無いダイアトニックコードの「I,IV,V,VIIm♭5」に関しても同様にマイナーコードにすることで調からはみ出して転調のきっかけ・渡り廊下とすることが出来ます。

留意点として、調という王国を支配する主和音のIに関しては慎重に扱う事が必要です。Imが急に現れると、一気に世界観が取って変わった感じがして唐突な印象になります。実質転調のきっかけとして使えるノンダイアトニックコードとしては「IVm,Vm,VIIm」が使いやすいでしょう。

転調の流れを再確認すると、まず最初に調性外のコードが出てきて、主和音の求心力(主和音の調性世界)を脅かし、次に転調先の新調が確定して新調の主和音に向かい終止感を感じるというステップがあります。

その流れからマイナーコードをサブドミナントマイナーとして扱って新たな調に繋げることも有効になります。サブドミナントマイナーはその調の主和音と結びつく求心力が高く、そのまま主和音と繋がって終止形を作ることが出来るコードです。新たな調の世界の入り口としてサブドミナントマイナーを経由して次の調の主和音に結びつく使い方を覚えておきましょう。

マイナーコードを新調の何番目のコードとするか

マイナーコードは調のダイアトニックコードの2度(IIm)、3度(IIIm)、6度(VIm)として所属する事が出来ます。マイナーコードに変化させたのなら新調における何度目のコードにするのかを意識する必要があります。

■転調先の2度(IIm)として使う場合
マイナーコードをIImとして使う場合はサブドミナントの代表的な使い方である2-5-1(ツーファイブワン)進行をすることで新調の響きを確定させましょう。

■転調先の3度(IIIm)として使う場合
IIImは属和音と主和音に共通音が多く、扱いづらいコードです。使う場合は、次のコードをIIImと構成音が大きく変わるコードに進行させます。具体的にはIV,IIm,VImなどのコードに繋げましょう

■転調作の6度(VIm)として使う場合
VImは平行短調の主和音としても機能しますが、それだけで転調を感じさせることは難しいです。VImとして扱う時は、新調の主和音にメリハリのある機能進行をさせます。コードの機能を切り替えることでVImであることが伝わるためです。VImはトニックなのでサブドミナントやドミナントの機能を持つコードに繋げます

メジャーの主和音をマイナーにする場合

主和音の3rdを歪ませるのはインパクトが強い方法です。主和音をマイナーにしたいのならドミナントモーションを使う事で勢いを付けて強引に変化させることが出来ます。ごまかしがきかない目立っても良いときに使う方法です(G7→Cm)。

ドミナントモーションを使った方法でインパクトが強すぎるのであれば、クリシェを使って自然な形でなだらかに変化させる事が出来ます。この場合はインパクトを抑えつつ、洗練された響きでメジャーの主和音をマイナーコードに変化させることが出来ます。

元の調からちょっとはみ出させたコードを作る→そのコードが含まれる別の調に転調する流れがベースにあるので、4和音の4つめの音だけ調性外を含ませ(IIIm6やVIm6といった6コードやIVsus4など)それを足がかりに別の調に向かったり、「VM7」のメジャーセブンスの音が元の調に無い音なのに敢えて使ってそのメジャーセブンスがダイアトニックコードに含まれている調に転調したりできます。スムーズな転調として使うのなら、クリシェを使ったり、転調前にあらかじめ少し調性外に変化させたコードをワンクッション置くなどして、聴く人に転調を段階的に知らせる事が有効です。