ブルース音楽について

ブルース音楽について

ブルース音楽はポピュラー音楽の起源と言われています。現代で人気のポピュラー・ロック・ジャズといった音楽の源流はブルースにあります。音楽理論体系は大きくクラシックとジャズの2つになりますが、ジャズ音楽で使われる音楽理論がそのままポピュラー音楽で用いられています。ブルースはジャズ音楽の起源なので現代ポピュラー音楽の源流となっています。

ブルースとは

ブルースは1800年代後半にアメリカに奴隷として連れてこられた黒人たちによる音楽です。当時流行した様々な国の音楽、要素が入り交じって、当時社会的に厳しい立場に置かれていた黒人たちの間で労働歌、黒人霊歌として生まれました。リンカーン大統領による奴隷解放令の後でも根強い差別は残り、その厳しい労働環境で生まれたのが労働歌であるブルースです。ブルースが元になってジャズが生まれ、ロックが生まれ、現代のポップスに繋がっていきました。

ブルース音楽の特徴

ブルースには他のジャンルの作曲にも幅広く応用できるオリジナルの理論があります。

■ブルーノートとブルーノートスケール
ブルースには、ブルーノートスケールといわれるクラシック音楽とはまるで違うスケールがあります。ブルーノートと言われるメジャースケールの3音、5音、7音が半音下げられた音はブルースにおける極めて重要な音になっており、この音が加えられたスケールをブルーノートスケール(ブルーススケール)と呼びます。

ブルーノートは厳密にはきっちりと半音(♭)下げた訳ではなく、「気分がブルーの(落ち込んだ)時に歌っていたら気持ちと一緒に音程も下がってしまった」と言われるとおり、現代の平均律では捉えられない微妙な下がり具合の音だと言われています。

■ブルースペンタトニックスケール
ブルースには5音で構成されるブルースペンタトニックスケールというものがあります。(例:ドミ♭ファソシ♭ド)。ブルースペンタトニックスケールに♭5(#4)の音を足したものがブルースを作曲する上で必要なブルーノートスケールですが、このスケールはブルース以外にもたくさん使えるスケールです。ジャズはもちろんのこと、ロック、ボサノヴァ、ポップス、BGMなどでおしゃれでかっこ良く、かわいくてコミカルな雰囲気を出したいときにもよく使われます。使い方としては、通常のメジャーやマイナーキーの間に挟む形でブルーノートを上手に挿入していくかがポイントとなります。

ブルース進行/ブルースチェンジ

ブルース進行には12小節を1コーラスを定型とする基本構造が存在します。

第1フレーズ トニック(4小節)
第2フレーズ サブドミナント2小節、トニック2小節
第3フレーズ ドミナント2小節、トニック2小節

という基本構造を元に、いろいろなバリエーションが存在します。絶対的な物ではなくあくまで基本の型なのでアレンジは自由です。シンプルな泥臭いブルースからII-V、セカンダリードミナントを用いたおしゃれなブルースまで様々なスタイルがあります。

ブルースの他ジャンルへの活かしかた。

ブルースは極めてシンプルなので、基本さえ押さえれば誰でも使えるものです。もともとブルースは専門的な音楽教育を受ける経済的余裕がなかった、厳しい社会環境の中で生きた黒人労働者たちの間で生まれた音楽です。ブルースの本質は理論や演奏技術ではなく、日々の労働や人生における不幸、欲望、闘病、理不尽、孤独などを歌った精神性にあるといいます。

精神面でのブルースは今を生きる日本人には難しいかもしれませんが、作曲家としてならブルースのテクニックを活かすことが出来ます。

■ブルースを活かすために
ブルースの要素を活かすためには、「ブルーノート」と「ドミナントセブンスコードの多用」が重要なポイントとなります。

■ブルースのコード進行について
ブルースはすべてのコードがドミナントコードになっています。これはクラシックの理論では説明できません。ドミナントコードが持っている特殊性は全3音の不安定な音程があること、ドミナントモーションが出来ること、スケールが持つダイアトニックコードに一つしかないコードである事、オルタード化できるということ、裏コードが存在する事など、ほかのコードと比べて非常に多彩な役割、可能性を持っています。ブルースの持つドミナントセブンスコードを前面に押し出し、ドミナントコードを制限なしに使う考え方は他にも活かせるでしょう。

■ブルースは根音が重要
他にもブルースは「根音だけで調性を考える」ことが重要な概念となります。ブルースでは根音さえダイアトニックコードであれば、それで調性が維持されていると考えます。ブルースにおいてはコードスケールよりも、根音の方が重要です。根音以外の上部音を無視して調性を考えることで新しい可能性が見えてきます。

初期のブルースにおいては、上に乗るコードはドミナントセブンスコードだけでしたが、ジャズの時代に入ると上に来るコードは何でもありになりました。クラシック作曲家のドビュッシーも根音のみによって調性感を保持し、上が自由に動くコードという発想をしています。この場合、根音は調性感を意識した進行をし、上部和音で自由な響きを使うことが出来ます。

根音はコードを構成する上で極めて重要な音であり、調性の成立に大きく影響します。よって、根音のみが調性の働き(トニックやドミナントなど)をしていれば、その上に乗っているコードがどんなものであろうと調性感をギリギリ維持できていると考えます。ブルース進行はこのような発展的なアイデアの可能性を持っています。

ブルーノートを他に活かす

ブルースの特徴はブルーノートですが、ブルーノートはブルーススケールとしての用法以外に応用することで様々な効果をもたらします。それぞれのコードスケールにブルーノートを組み合わせることで、普段使いとは異なる雰囲気を出すことが出来ます。ブルーノートと音階を組み合わせることで理論にはない独自の音階を作ることも出来るのです。ブルース的なアプローチは作曲の可能性を大きく広げてくれます。

参考文献

ブルース Wikipedia