今回は音楽理論の根幹となるダイアトニックコードについての知識をまとめます。調性感を保つためには、12種の音階のうち、使う音、使わない音を決めなくてはいけません。音階の組み合わせで成り立つコードは種類が限定され、ある一つの調性の中で成り立つコードをスケールコードといいます。ダイアトニックコードはその一つです。
ダイアトニックコード一覧表はこちら。
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ダイアトニックコードとは
世界中に数多くあるスケール(音階)のうち、西洋音楽ではメジャースケールとマイナースケールを総称してダイアトニックスケールといいます。それらのスケールコードはダイアトニックスケールコード、略してダイアトニックコードと呼ぶようになりました。
ダイアトニックコードとはある調(スケール、Key)において、その調が持つ雰囲気やコードの力関係(力場)を構成する和音の集まりのことです。その際何番目に積み重ねられた和音であるかが役割を決めます。ダイアトニックコードはスケール音の積み重ねによって作られており、音程・度数を示すディグリーの概念が重要になるのです。
特定のキーによらない一般的な法則性を考える時にはスケール音を表すローマ数字を使うのが通例です。アルファベットの音名ではなく、ローマ数字を用いて一般性を持たせた表記をディグリーネームと言います。ディグリーはローマ数字の大文字を使って表記されます。音程関係をすべてローマ数字で考えることで移調の時にも共通した音の配置を表すことができます。
ディグリーとローマ数字
完全1度 = I
増1度 = #I
短2度 = ♭II
長2度 = II
短3度 = ♭III
長3度 = III
完全4度 = IV
増4度 = #IV
減5度 = ♭V
完全5度 = V
短6度 = ♭VI
長6度 = VI
短7度 = ♭VII
長7度 = VII
資料・付録ページにてメジャーとマイナースケール3種のダイアトニックコードを一覧にしているのでぜひご活用ください。
各コードは実音とは無関係に調の中の位置によって特定の聞こえ方、役割を持ちます。その聞こえ方こそ、調性感を土台とした音楽の本質の部分です。
機能を持つコード 主要3和音 トニック、ドミナント、サブドミナント
調の中の位置によって特定のきこえ方をコードは持つのですが、その中でも特に重要な役割を持つコードを主要3和音といいます。
IとIVとVの3つで、
Iは主和音(トニック,T)
IVは下属和音(サブドミナント,SD)
Vは属和音(ドミナント,D)
とよびます。
それ以外は副三和音とよび、上記主要和音の代理や補佐の役割を持ちます。。
■I度とV度は相思相愛の関係,IV度は片思い
I度とV度の音はとても仲良しで、砂漠で飢え死にしそうになったときでも食料や水を分け合うぐらいの仲です。メタル音楽では、パワーコードというI度とV度の音をよく使います。I度とV度にとってはどんなに過酷な環境でも、非常に仲が良い関係なのでよく響くからです。ディストーション(歪み)で絡ませても、I度とV度の相性の良さは途切れず強固で、低音でもよく響きます。I度とV度は相思相愛で、完全4度のIVはまんざらでもない片思いをしているようなイメージです。
メジャースケールのダイアトニックコード
ダイアトニックコードはそのディグリー上に構築される和音のことです。すべて丸暗記する必要があります。
■メジャースケール
メジャースケールのダイアトニックコードは「○M7 ○m7 ○m7 ○M7 ○7 ○m7 ○m7(-5)」の順でコードが並んでいます(4和音の場合。3和音の場合は7度を無くす。)
Cメジャースケール3和音
C Dm Em F G Am Bm-5
「I IIm IIIm IV V VIm VIIm-5」
Cメジャースケール4和音
CM7 Dm7 Em7 FM7 G7 Am7 Bm7-5
「IM7 IIm7 IIIm7 IVM7 V7 VIm7 VIIm7-5」
例:Cメジャースケールのディグリー
Key=Cの「ドレミファソラシ」のスケール音の上に「I,II,III,IV,V,VI,VII」の和音が積み重なります。メジャースケールはそのままローマ数字を並べるだけです。
ディグリー(ローマ数字)につく変化記号は主音からの音程関係を表します。
マイナースケールのダイアトニックコード
マイナースケールのダイアトニックコードは3種類あります。将来的にコードスケールやジャズ理論など発展的な内容に入る時に力を発揮します。
■ナチュラルマイナースケール
ナチュアルマイナーのダイアトニックコードに並びは「○m7 ○m7(-5) ○M7 ○m7 ○m7 ○M7 ○7」となっています。
Aナチュラルマイナー3和音
Am Bm-5 C Dm Em F G
「Im IIm-5 ♭III IVm Vm ♭VI ♭VII」
Aナチュラルマイナースケール4和音
Am7 Bm7-5 CM7 Dm7 Em7 FM7 G7
「Im7 IIm7-5 ♭IIIM7 IVm7 Vm7 ♭VIM7 ♭VII7」
例:Cマイナースケールのディグリー
「ドレミ♭ファソラ♭シ♭」のスケール音の上に「I,II,♭III,IV,V,♭VI,♭VII」の和音が積み重なります。マイナースケールでは第3音が主音から見て短3度なので♭III、第6音と第7音も♭VI(短6度),♭VII(短7度)となります。
■ハーモニックマイナースケール
ハーモニックマイナーのダイアトニックコードの並びは「○mM7 ○m7(-5) ○augM7 ○m7 ○7 ○M7 ○dim」となっています。ナチュラルマイナーの第7音が半音上がったスケールですが、すべての和音が影響を受けます。増5,減5,減7の和音が発生し、メジャースケールには出てこない和音が登場することで明確なマイナー感を出すことが出来ます。
Aハーモニックマイナー3和音
Am Bm-5 Caug Dm E F G#m-5
「Im IIm-5 ♭IIIaug IVm V ♭VI VIIm-5」
Aハーモニックマイナー4和音
AmM7 Bm7-5 CaugM7 Dm7 FM7 G#dim
「ImM7 IIm7-5 ♭IIIaugM7 IVm7 V7 ♭VIM7 VIIdim」
■メロディックマイナースケール
メロディックマイナーはナチュラルマイナースケールの第6音,第7音が半音上がったスケールです。そのためこの第6音,第7音を含むすべての和音が影響を受けます。メロディックマイナーのコードの並びは「○mM7 ○m7 ○augM7 ○7 ○7 ○m7-5 ○m7-5」となっています。V度上の音だけでは無く、IV度上にもドミナントセブンスコードが生まれるのが特徴となります。
Aメロディックマイナー3和音
Am Bm Caug D E F#m-5 G#m-5
「Im IIm ♭IIIaug IV V VIm-5 VIIm-5」
Aメロディックマイナースケール
AmM7 Bm7 CaugM7 D7 E7 F#m7-5 G#m7-5
「ImM7 IIm7 ♭IIIaugM7 IV7 V7 VIm7-5 VIIm7-5」
ダイアトニックコードの使い方について
これで一連のダイアトニックコードを紹介しました。実際の作曲では、これにシックスコード(6)やサスフォー(sus4)コードが加わります。ディグリーで覚えることで、それぞれのスケールを暗記していればそれをローマ数字に代入することですべてのダイアトニックコードを導くことが出来ます。
作曲の第一歩はこれらのダイアトニックコードを暗記し、スラスラと並べるところから始まります。色々なキーのダイアトニックコードを導くためにも、メジャースケールとマイナースケール3種類は暗記しておく必要があります。
資料・付録ページもご活用ください。