ディミニッシュコード(dim, dim7)について

ディミニッシュコード(dim, dim7)について

ディミニッシュコードは不気味な雰囲気をもたらしたり、曲の盛り上がりにピンポイントで使うことで強烈な印象をもたらしたりすることが出来る応用の幅の広い和音です。

ディミニッシュコードの基本原理

ディミニッシュコードは♭9のテンションを含めたドミナントセブンスコードであると言えます。「○7(♭9)」の根音を省略した形がディミニッシュの正体です。

同時に複数のキーに所属し、転回してもコードの性質が変わらず2つの3全音(トライトーン)を構造的に含むと言った他にはない特徴を持つコードです。

デミニッシュは根音を省略したドミナントコードですから、ディミニッシュコードの長3度下に音を加えると○7(♭9)の形となり、その正体が分かります。例えばG7(♭9)のソシレファラ♭のソを省略すると、シレファラ♭となり、Bdimになります。このことからBdimはドミナントコードの機能を持ち、G7の代理コードとしても使えることが分かります。つまりはBdim→Cのようにドミナントモーションとしてトニックに解決することができます。G7の全3音である「シとファ」をBdimも含んでいるので納得感があります。

ディミニッシュコードは1つのコードに4つの性質があります。転回させてもコードの構成音が変わりません。
例えば、
Bdim – Ddim – Fdim – A♭
と根音は変わりますが、構成音は一定のままです。

ディミニッシュコードは短3度のみの積み重ねで出来ています。どこから初めても同じ構成音のコードになります。

ドミナントコードが元になっているディミニッシュコードは、構成音が代わらない4種類のドミナントコードが隠れているので結果として4つの調に属しているとも言えます。これがディミニッシュコードの最大の特徴で、ドミナントセブンスコードの代理以外にも転調や調性感をあやふやにしたいときによく用いられます。

ドミナントコードのディミニッシュ化

ディミニッシュに長3度下の音を足せばドミナントになりますが、その逆にドミナントコードをディミニッシュコードにすることができます。○7を○7(♭9)にして、根音を抜けばdimコードになります。セカンダリードミナントや裏コードにかかわらず、セブンスコードであれば何でもdimコードに変更できます。

ディミニッシュコードの使い方

ディミニッシュコードの用途は多種多様です。

■パッシングディミニッシュ(Passing diminish)
経過させるという意味を持つパッシングの用途で使うディミニッシュコードが一般的な用法です。使い方は、全音関係にある2つのダイアトニックコードの間にディミニッシュコードを挟むことでコードを半音階で滑らかに進行させることが出来ます。

C→C#dim→Dm

C#dimの正体はA7(♭9)なので、Dmを仮のIにした時のドミナントモーションをしていることが分かります(非常に滑らかに進行できます)。

基本的にパッシングディミニッシュは上行進行で使われることが多く、下行進行で使われることは少ないです。下行で使うとドミナントモーションの響きではなく、独自の雰囲気を持ったコード進行になります。

なお、VIIm7-5はドミナントモーションが成立しない(m7-5は仮のIとして成立しない)ため、#VIdim→VIIm7-5という進行はあまり用いられません。

■不気味な雰囲気や調性が曖昧な曲調の楽曲で使う。
ディミニッシュコードは不気味で不協和の強いコードというイメージですが、上手に使うことで浮遊感のある不思議な響きを持つ曲を作ることが出来ます。クラシックの理論で言うところの偶成和音という用法で、ディミニッシュコードが一度に4つのキーに属している=調性感が曖昧である性質を利用しています。

ディミニッシュコードだけでコード進行を組み立てることでアニメやゲームでよく使われる不安・恐怖のシーンを演出する曲を作ることができます。

■装飾目的で使用
ダイアトニックコードをドミナントモーションなどの理論的背景を持たず、ただ装飾する目的でも使えます。また、トニック上のディミニッシュをトニックディミニッシュと呼びます。クラシックの偶成和音やジャズでよく見られます。

ディミニッシュコードのコードスケール

ディミニッシュコードで使う事が出来るスケール(コードスケール)を割り当てる方法は以下の2つの方法があります。

1,ディミニッシュスケールというディミニッシュコード独自のコードスケールを使う。
2,ディミニッシュの元となるドミナントセブンスコード(○7(♭9))を見つけて、○7(♭9)で使えるHMP5B、スパニッシュ8スケールを使用する。

■ディミニッシュスケール
ディミニッシュスケールはコンディミスケールと似ています。コンディミは「半音→全音」の繰り返しでしたが、ディミニッシュスケールは「全音→半音」の繰り返しになっています。ディミニッシュコードの全音上にディミニッシュコードが乗っているイメージです。

最大の特徴は8音音階で構成され、ノンコードトーンがすべてテンションであることです。スケールを上下する動きをしたい場合は調性感を損なう感じが出るスケールで使いどころは難しいスケールですが、少ない音符でディミニッシュコードのテンションをきれいに利用するような曲はとても美しく響きます

■HMP5B (ディミニッシュコードの根音の長3度下のHMP5B)
HMP5B(ハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウ)は調性感を保つことが出来るのが特徴です。

求め方は、ディミニッシュコードの正体である○7(♭9)の和音を求めてから、つまり根音から長3度下の音のHMP5Bスケールを使います。Bdimの場合はG7(♭9)が正体になるので、GHMP5Bスケールを使います。HMP5Bはドミナントとしての性格が強く出ます。

上行でのパッシングディミニッシュやドミナントセブンスの代理コードとしてディミニッシュコードを使う時はこのHMP5Bスケールを使った方が自然に繋がります。また、HMP5Bスケールに#9を加えたスパニッシュ8スケールも使う事があります。

ディミニッシュコード:実際の使い方

ディミニッシュコード上では、長2度のテンションを使ったメロディを構築できるのがメリットです。しかし、ディミニッシュコードは複数の調に所属する=明確に所属している調がないため、メロディラインによっては宙に浮いたような不自然なメロディになってしまうことがあります。これは音数を少なくし、動きも小さくすることで回避できます。

ディミニッシュコードでもテンションが使えますが、ディミニッシュのM7テンションの明確な表記は存在しません。ディミニッシュコードにテンションを入れることがポピュラー音楽では少数だからです。クラシックの高度な理論では使われますが、クラシックの世界ではテンションはすべて転位音(一時的にずれた音)として考えます(全長転位)。

HMP5Bスケールはテンションが使えない分、調性感を明確に出すことが出来ます。この用法ですとdimの元となっているドミナントセブンスコードとしての意味合いが強く出ます。ということは、HMP5Bはスケール内を動き回るようなメロディを作っても明確な調性感が出ます。しかしながらノンコードトーンはすべて短2度になり、オルタードっぽい響きになります。

意識的にディミニッシュコードを自分の作曲に取り入れる作例を作って練習してみましょう。