神秘和音はロシアの作曲家、アレクサンドル・スクリャービンによって考え出された和音です。スクリャービンはシェーンベルクやドビュッシーらとほぼ同時期に無調性の楽曲を書くことに成功していますが、この神秘和音が重要な役割を果たしたといいます。
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神秘和音とは?
神秘和音とは、下から根音、#11th,第7音、第3音,13th,9thの順で音を積み上げたものです。すべて4度堆積で構成され、下部に3全音が2つある特殊な和音です。#11thは下方変化した第5音とも言えます。
英語での合成和音Synethetic chordとも言うことができ、コードネームやテンションによる解釈が可能なので調性の名残が残っています。実際のスクリャービンの作品では、神秘和音が完全な形で現れるのではなく、4度堆積の9th,#11th,13thのテンションを持ったドミナントコードが神秘和音を用いたスクリャービン音楽の基本となります。
ポピュラー音楽への応用
長調・短調はトニックとドミナントによる「安定」と「不安定」の存在によってカデンツが生み出されています。旋法(モード)では旋法の持つ特性音のあるかないかでコード進行を構築します。
神秘和音は神秘和音と神秘和音ではない和音の二つで作曲をしていきます。また、神秘和音を移調したり、わずかにテンションを変えたり微細な変化を取り入れることもできます。
神秘和音は○7(9,#11,13)のドミナントコードで、コードスケールはリディアンドミナントになります。(完全4度下のメロディックマイナー)
スクリャービンの行ったことはジャズでいうオルタードに近い感覚です。
神秘和音は十二音技法と同じようにハーモニーに制限が加えられたものだと言えます。よって、ハーモニー以外のメロディー、リズム、音色、音高、音量の表現に創意工夫をしてオリジナリティを出していきます。
参考・出典
・「作曲基礎理論 〜専門学校のカリキュラムに基づいて〜」井原 恒平 (Amazon)
・神秘和音(Wikipedia)