前回セカンダリードミナントについて扱いましたが、今回はその応用となるツーファイブ(トゥ・ファイブ)進行について学んでいきます。
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ツーファイブ(トゥ・ファイブ)とは
セカンダリードミナントで求めたドミナントコード(V)の前に、そのVに対しての「IIm7」または「IIm7(-5)」のサブドミナントのコードを置いて、より勢いのあるII-V(ツーファイブ)進行にすることができます。ドミナントセブンスコード(V7)を分割する感覚に近いでしょう。このツーの部分(IIのコード)も含めて一時的転調となり、元のKeyを離れた響きになります。II-V-I(ツー・ファイブ・ワン)という勢いのある気持ちいい流れを曲に加えることができるのです。
セカンダリードミナントで仮の主和音に向かってV-I(orIm)で説得力のある進行が構築できましたが、Vの前にIIを置いたIIm-V進行はドミナントを導く自然な進行です。5度下ずつに進行する音進行の変化の規則性もあって、IIm-V-I進行も聴く人にとても強い納得感を生み出します。
ポイントは表拍にIIがきて、裏拍にVがきます。その逆(裏がIIで表がV)にはなりません。
II-V(ツー・ファイブ)のIIはメジャーキーではV7の完全4度下の○m7-5コードとなります。仮のIを持つスケールに対してのII-V-I進行では、仮のIの完全4度下のV(7)がセカンダリードミナント、さらにそこから完全4度下がII(○m7,○m7-5)となります。強力な4度の進行が連続していることで、コード進行の可能性を大きく広げることができる技法といえます。
セカンダリードミナント一覧
一時的II度 → セカンダリドミナント → 仮の主和音
・(IIIm) or IIIm(♭5) → VI7 → IIm
・#IVm or #IVm(♭5) → VII7 → IIIm
・Vm → I7 → IV
・(VIm) → II7 → V
・VIIm or (VIIm(♭5)) → III7 → VIm
※一時的II度に()がついているものは元々のダイアトニックコードに存在しているため新しい響きではありません。一時的転調としてツーファイブを使いたいのであれば、元のダイアトニックコードに存在していないコードを使います。
上記を丸暗記しなくても仮のIを主和音としたダイアトニックコードスケールを導いて当てはめる方法でも構いません。
ツーファイブの使われ方
ツーファイブ(II-V)の部分はドミナントモーション(V-I)と比べると必然性が低いので、一小節分まるまる与えてしまうとIIの部分が不安定になります。そのためIIを短めに使うのですが、付随してVの部分も短めに使われる傾向があります(1小節の中でII-Vを収める)。
メロディは元の調でもツーファイブの一時的転調の調でもどちらでも構いません。一時的転調先のスケールでメロディを置く場合はあくまで元の調の流れや雰囲気を壊さない範囲で配置していきます。
応用と発展:セカンダリードミナントのII-Vにおけるメロディとコードスケール
各スケールの2度と5度、「IIm7 – V7」という組み合わせは各スケールに一つしかありません。そのツーファイブの組み合わせをもつスケールからメロディを組み立てていきます。
資料ページのダイアトニックコードの一覧を見てもらうとわかりやすいのですが、仮のIがメジャーコード「I」ならば「IIm7 – V7」、マイナーコード「Im」ならば「IIm7(-5) – V7」が使われることが多いです。多いだけで、必ずこの組み合わせで行かなくてはならない、というわけではありません。
コードスケールの基本的な考え方はVと同じになります。IIはあくまでVに追随するコードです。基本的に○m7はドリアンスケール、○m7-5はロクリアンスケールを選択します。
■ドミナントセブンスコードへのツー・ファイブ・ワン
仮のIがドミナントセブンスコードだった場合、その「仮のIのV」もツーファイブに分割できます。
・G7をツーファイブに変換すると、「Am7_D7」⇒ G7となります。
・さらにそのG7をツーファイブに分割すると、「Am7_D7」⇒「Dm7_G7」となって、D7→Dm7と一見すると繋がらない進行も理論的に説明できるようになります(かならず最後にG7があることが条件。G7が無いと意味合いが全く違ってくる。)。
また、Cメジャーで仮のIをG(V)にした時のAm7-D7-G進行の場合、AmをII-VのIIとみなすか、単なるダイアトニックコードとして扱うかで使える音が変わってきます。AmをII-VのIIとみた場合、ドリアンが使えるのでファ#の音が使えることになり、メロディーなどでダイアトニックコード以外の音を使うことが可能となり、響きの可能性が拡がります。しかしAmをダイアトニックコードとして扱うとエオリアンスケールと言うことになり、もとのキーの音をそのまま使うことになります。
II-Vの応用について
II-Vの応用となる知識を以下にまとめておきます。コードスケールの知識が必要な応用編なので、初学者の方はまずは基礎のII-Vを利用した曲をたくさん作ってから試して見ましょう。
■II-VのVを省略
II-VのVを省略させ、IIだけ登場させるフェイント的な使い方です。例えば、Am7にドリアンを当てはめて次のV(D7)を省略したりできるので、なんの脈絡も無くドリアンを使えたりして楽曲に揺らぎを作り出すことが出来ます。
■II-VのIIを変化させる
II-VのIIのコードは○m7はドリアン、○m7-5はロクリアンのどちらかになります。しかし、○m7を○m7-5に変化させたり、逆に○m7-5を○m7に変化させることもあります。使用するコードを変化させるのと同時にコードスケールも変化するので、ドリアンのロクリアン化、ロクリアンのドリアン化が出来たりもします。これを活用することで元のダイアトニックコードに無い#や♭に変異させた音が使えるようになったり、ドミナントセブンスコードのオルタード化も含めてかなりの調性の揺らぎを作ることが出来ます。
■II-Vの連続
II-Vを使う時にII-V-Iと使わず、II-Vのみが連続するコード進行も使われます。特にジャズの分野ではII-Vが多用されるので、コード進行にたくさんのII-Vを見いだす事が出来ます。連続するII-Vは非常になめらかに聴こえます。
■セカンダリードミナントの連続、エクステンションドミナント
セカンダリードミナントがひたすら連続する進行をポピュラー(ジャズ)理論ではエクステンションオブドミナントと呼びます。クラシックでは、ドミナントに対してのドミナントコードをドッペルドミナント(2重ドミナント)と呼びます。ドミナントモーションの行き先にドミナントコードを使ってドミナントモーションを連続させる手法もあります。ドミナントモーションの連続により、非常になめらかなコード進行となるのが特徴です。常に完全4度進行だと本格的に転調してしまうため、一時的転調のニュアンスを残すには、増4度進行にするなどして調整しましょう。
■II-Vを用いた転調
ツーファイブはあくまでも一時的に他の調からII-Vを借りてきた一時的転調という形をとっています。ですが、そのまま借りっぱなしにすることで、借りパクのように転調することも可能です。ドミナントモーションを介して、CメジャーからEメジャーキーにそのまま転調…ということも可能です。