セカンダリードミナントからの転調

セカンダリードミナントからの転調

セカンダリードミナント一時的転調の手法で、ダイアトニックコードを「仮のI」と見立てその「仮のI」に対してのドミナントとなるルートのセブンスコードを元の調のコード進行に加える方法です。ここではそのセカンダリードミナントを利用した転調について見ていきます。

転調の前提はどの調に居るのかをハッキリ示すところから

転調している状態とは、これまでいた世界から別の世界に入ったという事でもあります。聴く人は無意識に同じ調に居ることを感じ取ろうとする傾向があるので、転調を効果的に用いるには今自分がどの調に居るのかをしっかりと聴衆に聴かせなくてはなりません

そのためには、早々にスケール音を登場させて調を把握しやすくすることが重要です。スケール音がなかなか出そろわないと調を把握するのが困難になります

・早々にその調のスケール音を登場させると調が分かりやすくなる。色んな機能のコードを使う。
C-F-G、Am-Dm-Em

・同じコードばかり連続して使ってなかなかスケールの音が出ないと調がわかりにくい
C-C-C-Am、F-Dm-F-Dm

セカンダリードミナントは一時的な転調ですが、「仮のI」に解決することでようやく完成します。セカンダリードミナントが鳴っている間は元々の調にあるコードが変形したもの、という印象に止まりますが、仮のIに行くことで別世界の扉が開かれるのです。

セカンダリードミナントから仮の主和音に行き、そのままそのセカンダリードミナントの世界へ

「セカンダリードミナント→仮のI」からその「仮のI」の世界へとそのまま転調することが出来ます。

■家族関係、国家関係で例えるセカンダリードミナント
転調は家族のようなもので、セカンダリードミナントは近所に住んでいる親戚のような関係です。セカンダリードミナントで行くことが出来る世界は元の調から見た属調や下属調の世界です。#や♭が一つしか違わず、殆ど手続きすること無く世界を行き来できます。それに加えて、同じスケール音(調号)を持つ平行調は陸続きの隣国のようなものでパスポートなどいらずに手続きもなしに自由に行き来てしまいます。

少しの構成音しか違わない世界に転調する場合、元の調との違いを示すその調ならではの特性音を使うコードやメロディを多用する必要があります。違いが少ないとそれだけ聴衆にとってはよく分からない展開になってしまいます。聴衆は元の調が連続していると聞き取る傾向があるので、転調を見せたいのであればその調特有の音を意識して多く使いましょう

目的とする転調への道のりを工夫する

一時的転調ではIとVIImを除いた「仮のI」を主和音とする近くの調にしか転調できないのですが、それだけだと変化が物足りず、転調の醍醐味である断絶感や空気が切り替わった時に感じる変化の味わいが少なくなってしまいます。そのため、同じ目的地を目指すとしても、その最終目的地までにたどりつく道程を工夫します。紆余曲折遠回りをして目的の調にたどりつくことで複雑で味わいのある、目の覚めるような転調が構成できるというわけです。具体例として、敢えて最終目的地の調の平行調にセカンダリードミナントで向かい、その平行調から最終目的とする調に再度転調するといった感じです。

ドミナントセブンスばかりだとあからさまなので装飾したりワンクッション入れる

セカンダリドミナントではセブンスコードばかり多用するとワンパターンでありきたりな進行になるので、○7sus4→○7という風にsus4を挟んだり、○7sus4から連想されるドミナントセブンスをすっ飛ばしてそのまま仮のIへと向かったりします。sus4は調性外の響きがスムーズに調性内に解決する滑らかで心地よい進行感を生み出します

sus4の代理として「サブドミナント系の和音(IIm,IVM7)onV」という形も同様に使われますが、こちらはそのままドミナントの代理として使うこともあります。

トゥファイブ(IIm→V7)進行もトゥの部分がワンクッションとなり、滑らかでスムーズな進行を手助けします。

セカンダリードミナントに変形する前の元の調にあるダイアトニックコードもワンクッションとして活用出来ます。(Am7-A7-DM7など)

仮のIがマイナーならメジャーに変化させても良い

ドミナントセブンス(V7)からはIとImというメジャーの主和音かマイナーの主和音かどちらにも行けます。元の調のダイアトニックスケールにあるマイナーコードを、ピカルディ終止に見られるように、ドミナントセブンスを通してメジャーコードに変化させる事も可能です。

ドミナントセブンスコード上のメロディを意識して決める

一時的転調を介してのメロディはどのスケールを使うのかについて意識する必要があります。特にドミナントセブンスコード(V7)上のメロディをどうするのかに集約されます。転調先のスケールでメロディを構築するよりも、ドミナントセブンスの段階では前の調のスケールでメロディを構築する方が無難となります。また、転調先のメロディを先に使う使い方はメロディを目立たせ、引き立たせる効果があります。聴く人は調性が移り変わること視野に入れて聴くわけでは無いので、作る方は聴く人の期待に沿いたいのか、裏切りたいのかについて意識してメロディのスケールを決定していく必要があります。