分数コード・オン(on)コード・スラッシュコードとはルート(ベース)と上に乗っかるコードの部分が独立したコードです。
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コード(和音)はルートが最も重要
コードを構築する構成音の中で最も重要なのがルートの音です。音の最低音と最高音は比較的良く聴こえる音ですが、最低音は同じ構成音を持つ別のコードを判別する際の基準となります(Am7とC6など)。
最低音がルート以外の音であった場合、故意に選択されたサウンドと考えるべきで、最低音を指定するために斜め線を引いたスラッシュやon、分数の形で表記することから分数コードと呼ばれ、斜め上の分子にコードネーム、その下に分母を単音のアルファベット音名で表記します。
コード + / or on + 最低音(単音)
このスラッシュ表記だと現代のモダンジャズではアッパーストラクチャートライアドも表記することになり、分母も単音では無くコードを表している時があります。よって、onを使うほうが分母に単音を示すのに通じやすい事があります。
オン(on)コードについて
オンコードのコードの表記は「▲on■」で、▲がコードで■がルート音です。ルート音は単音です。
コード進行はルート音の進行なので機能はルートに依ります。「DonF」ならそのKeyのダイアトニックコード上でFの機能がそのオンコードの機能です(Key=CならIVのサブドミナント)。
オンコードは「ルート」と「コード」を別々に考えられるのが一番の利点です。コード進行のルート音の都合とコードの都合を別々に考えられることでメロディとコードが合わせやすくなります。コード進行を変えずにコードとメロディの関係を良くすることができるので便利です。また、STMや強進行が成り立つようにルートを変更すると曲に美しい流れや勢いのようなものが生まれます。
オンコードはこうした微調整に使います。むやみやたらに使うと曲がぎこちなく感じます。
転回形を表す分数コード
コードの中に元々存在している構成音を使って、基本形のルート音以外の音が一番下に来たことを表す時にも分数コードは使われます。
各コードには基本形があり、最も安定するまとまりのある響きを持ちます。ルートが一番下だと倍音が5thと同じ音になるからです。
3rdが一番下(第1転回形)だと倍音の中にメジャー7thの音が大きく含まれ、5th(第2転回形)が一番下だと倍音の中に9thの成分が大きく含まれます。
メジャーコードやマイナーコードはルートが一番下の時最も安定します。
転回形を示す分数コードはコードが基本形では無い不安定な響きを持っている事を示し、ルートでは無い音が最低音であるまとまりの悪さや不安定さのボイシングを伝えてくれるものとなります。
不安定な転回形の響きを後続のコードによって気持ち良く解決させる使い方をします。単音が繋がっている感じを作るために最低音を順次進行させ次のコードに繋ぎます。ルートが次のコードの基本形の最低音へと回帰することで聴く人は安心感を得ます。直後ですぐに解決しなくても、順次進行で最低音を繋いでいく限り解決を引き延ばしできます。この場合ノンダイアトニックコードが来ても刺繍音としての役割を果たすことが出来半音繋がりの気持ち良い進行が作れます。
テンションコードの省略形としての分数コード
コードの構成音の中に無い音が最低音に指定された分数コードの場合、全体としての響きは複雑になります。聴き手にとってはまず最初に最低音をルートとしたコードを想定します。
EmonAであれば、A(ラ)の上にE(ミソシ)が来てAm7(9)の省略形(ラドミソシのドが抜けた形)といえます。
響きは大人っぽく複雑になりますが、転回形とは違ってコードの省略形と解釈されるため不安定では無く複雑なコード(=テンション)としてきこえます。
ペダルポイント
ペダルポイントは大昔に教会で行われたオルガン演奏の特徴である通奏低音です。オルガンのペダルを踏みっぱなしにしたことからペダルポイントと呼ばれています。表面の和音進行は通常通りですが、最低音は変わりません。主音や属音、下属音が使われます。
クリシェ
ルートから始まり加工していくクリシェ進行では最低音の動きもできます。コードを動かさずにルートだけが動く効果も可能です。
次のコードのつなぎにつかう
G-GonF-EmやAm-AmonG-Fなど順次進行で3度下のコードへ向かう場合の繋ぎとしても分数コードは使われます。
ドミナントとしての分数コード
最低音をVとして、上にサブドミナント系の和音をのせた響きはドミナントセブンスコードの響きとして使われます。導音を含むとドミナントの色合いが強くなり、導音(Vの3rdの音)の代わりにsus4があるとドミナントっぽさが弱くなります。
こうした工夫がされる理由は、ただのV7(トライトーンが解決を強く望む進行)だとアンパンマンの歌みたいに素直すぎてダサい場合があるからです。退屈させないためにsus4を挟んだりすると少し我慢してからV7に進行させたりするなど大人が聴いても聴き応えがある曲が作れます。
■Memo
・分数コードはベーシストの役割。ベーシストの動きを増やすために使う。ベースに使われる音は順次進行で次のコードへの近道をするためだったり、何かしらその音を使う目的がある。
・3rdが一番下だと不安定になる。ルートが完全に安定型。5thだと多少安定する。
・トニックとドミナントの上であれば、ある程度好き勝手にコードをつけても安定する。
・サブドミナントだとやや不安定になる。サブドミナントの分母にVのコードをならすとV7のようにきこえてしまう。
・分かりやすい曲は、その曲を解釈する楽しみを失っているということ。
・ジョンウィリアムズのスターウォーズやインディージョーンズ、スーパーマンなどはクラシックより。久石譲はポップスより。
・クラシックでは分数コードの低音に和音の音を弾いてしまうとせっかくの聴く楽しみ(解釈の楽しみ)が奪われてしまう。
-以下未整理知識備忘録-
分数表記で、分母が分子との間に機能的に無関係の物をスラッシュコードと言います。スラッシュコードはUSTとはちがい、制限が少なく非常にバリエーションに富んだ使い方が出来ます。分子にテンションが含まれた物をスラッシュコードといいます。テンションを含まない場合は普通の4和音としてコード表記します。
■スラッシュコードの原理
分数コードの分母は普通はコード構成音のどれかになっています。CM7であれば、E,G,Bのどれかが分母に入ります。
しかし、分母に全く元のコードとは機能的にも入らない、要するに転回形にならないものがあります。一見非機能的ともいえる分数コードです。
USTはトライトーン(全3音)上のトライアドという定義がありますが、自由に分数コードを構築できるのがスラッシュコードの特徴となります。
一見複雑ですが、すべてテンションコードで考えると理解が進みます。
テンションコードやオルタードコードを深く知らない演奏者のために、コードネームさえ読めれば分かるようにあえてスラッシュコード表記にしている場合があります。
スラッシュコードはUSTと同じく響きの分離感、浮遊感を得ることが出来ます。上部のコードの形態がちゃんとしていることで、無造作にテンションを鳴らしたときよりも、きれいにテンションが響くようになります。
■使い方
スラッシュコードは上部の音の集まりを3度系のコードの形にすることがポイントとなります。
コードを組むときにテンションを無造作に入れるのではなく、分子のコードを○,m,M7,m7,mM7にして2度でぶつかる部分を無くすことで美しい響きを得て、分母と分子で異なる響きを持つきれいな分離感、浮遊感を得ることが出来ます。
上部の音の集まりをコードトーンとテンションの組み合わせでコードメームがつく形に落とし込めればスラッシュコードを作れます。
考え方もUSTと似ています。常にコードの根音を意識し、テンション表記にしたらどんなコードが隠れているのかを考えます。そのためどの音がコードスケールで、テンションなのかを常に把握しておく必要があります。
機能的には多少破綻しても、上部の響きがちゃんとしたコード進行がつく3和音、4和音コードが鳴っていれば音楽的に破綻せずに押し通せます。
ブルースではベースが調性を維持していましたが、今回はベースが自由で上部和音がしっかりとしたコードを奏でることで同じように調性を維持しています。
またスラッシュコードはUSTの上部3和音の制約がないので、sus4や4和音も上部に乗っけられるのがポイントです。
1つの根音の上に12種類すべてのメジャートライアドを乗せることも可能です。
根音とトップの間に短9度が発生すると不協和が強くなるので、なるべく内声に埋めます(音が一番目立つため)。
以下個別にスラッシュコードの活用例を記載する予定。
分子がメジャーかマイナーのトライアドで在れば分母に何が来てもコードとしては成立しているということです。