ハーモニゼーションとはメロディやフレーズにコードをつける=ハーモナイズ(和声化)することです。こうした工程をヴォイシングともいいます。今回はジャズっぽくするためのアプローチ(音が移動すること)を軸に知識をまとめます。ジャズではメロディを単音では無く、ジャズらしい和音を付けて弾きます。このあたりは実際にYoutubeなどでジャズの動画を視聴してみるのも良いと思います。
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4声和音 4 Way Closed Voicingについて
基本となる4和音の弾き方です。基本的に1オクターブの範囲内で構成し、それを徐々に発展させて行きます。
メロディがコードトーンの場合は、メロディがトップ音になるように転回した形のコードを加えます。コードが3和音の場合は、6thや7thを自由に加えて4和音にします。アボイドノートに気をつけ、例えばメロディがルート音の場合はM7はアボイド(半音)の関係になるのでM6を付け加えます。コードの響きに応じてM6やM7など自由に変えて行きます。
メロディがノンコードトーンの場合は、基本的にコードトーンの時と同じくメロディがトップ音になるようにコードを転回します。その場合、メロディの直ぐ下にくるコードトーンを省き、その次から重ねていきます。
シンコペーションは次に来るコードが先回りして入ってきていると考えます。
アプローチから考えるハーモニゼーションについて
アプローチとはノンコードトーンがコードトーンに解決するときのコード付け(和声化)の方法です。アプローチは8分音符や16分音符など短い時間で行われます。アプローチとはシンプルに音の移動のことです。
■ドミナントアプローチグループ
トライトーン(全3音)音程の解決=ドミナントモーションを基本とした考え方です。
・オルタードドミナントアプローチ(Alt)
・ディミニッシュドアプローチ(dim)
・ドミナントアプローチ(Dt)
の3つあります。
■クロマチックアプローチ(Cr)
半音進行を基本とした考え方で、半音で解決するメロディに幅広く適用できます。
■スケールアプローチ(Sc)
ダイアトニックコードを基本とした考え方です。
ジャズ(Jazzy)にするには上記の上から順番のアプローチをすることが効果的です。
オルタードドミナントアプローチ Alt
ドミナントモーションを使って、アプローチされるコードのルートを基準とした「#9,♭13,m7」のメロディからコードトーンにアプローチする方法です。
例をあげるとCを基準とすると、レ#からミへアプローチすることがそれにあたります。Cの#9であるレ#がCのコードトーンであるミ(M3)へとアプローチしています。
G7(#9,♭13)→Cにすれば、Cへ向かうドミナントモーションのようになっています。レ#はGを基準とした♭13です。コード進行ではなく和声化の話なので、ルートまで変更する必要は無く、あくまでドミナントモーションのように見える和声化なので、アプローチ元のコードは必ずしもルートを用意しなくてはならない訳ではありません。
まるでオルタードドミナントからトニックに解決しているように見えるハーモニゼーションなのでオルタードドミナントアプローチといいます。
ディミニッシュドアプローチ Dim
ドミナントモーションのアプローチ先のコードのルートを基準にした「9,11,M7」のメロディからコードトーンにアプローチする方法です。もともとドミナントモーションを元にしたやり方ですが、♭9を使ったコードは結果的にディミニッシュコードの形になるためこの名がつきました。G7(♭9)はルートを省略するとDdimと同じになります。まるでディミニッシュコードからアプローチしているように見えるためこう呼びます。
Ddim→Cは感覚としてはG7(♭)→Cと同じです。レからドにアプローチすると、C基準で9thからコードトーンのルートにアプローチしていると言えます。
ドミナントアプローチ Dt
ドミナントモーションを使い、アプローチされるコードの「13」のメロディからコードトーンにアプローチする方法です。
G7(9)→C、またはG7(9,♭13)→Cがよく使われます。ラからソへのアプローチでは、13thからCのコードトーンのP5にアプローチしていることになります。ラはGに対して9thです。
クロマチックアプローチ Cr
クロマチックアプローチはコードトーンへ半音上または半音下からコードトーンにむかってアプローチする時に使う方法です。半音でアプローチする所にはどこでも使えます。
基本的にドミナントアプローチグループを優先するので、ドミナントアプローチグループが使えない箇所で効果を発揮します。アプローチ先のルート基準で「#11,♭9」のメロディからコードトーンに向かう場合などです。
アプローチ先の和音のコードトーンを和声化し、和声化したコードトーンに向かって全ての構成音が半音でアプローチするように和声化します。
結果としてルートが半音違う同じ種類のコードが出来ます。ハーモニーの半音平行移動をしていることになります。
スケールアプローチ Sc
横の繋がりである同じKey内のダイアトニックコードを使ってアプローチする方法です。ポップス的な雰囲気になります。スケールアプローチは以下の条件で使えます。
・アプローチする音がアプローチ先のコードのスケール音に含まれていること。
・アプローチコードにトライトーン(全3音)音程がない事。(ドミナントセブンスに含まれるファとシのような増4度の音程が含まれないこと)。ダイアトニックコード上のV7とVIIm7(-5)は全3音が含まれるため使えません(それ以外のダイアトニックコードは使える)。
Key=CならCのノンコードトーンのメロディを「CM7,Dm7,Em7,FM7,Am7」を使ってコード付け(ハーモナイズ)してコードトーンにアプローチします。可能な限りTとSDを交互に使います。○M7の部分は○6に変えることも自由に出来ます。流れによってはコードトーンをアプローチしてハーモナイズ(ボイシング)することもあります。
応用:ダブルクロマチックアプローチ Wcr
クロマチックアプローチが2連続したものです。場合によっては3連続以上の時もあります。
応用:リーピングアプローチ Lp
これまでは2度(半音、全音)の動きでアプローチを行っていましたが、リーピングアプローチはその名の通り3度以上の跳躍(リーピング)してアプローチする方法です。具体的には転回形を使ったものになります。転回されたことで跳躍が生まれるだけで、基本的なアプローチ方法はオルタードドミナントアプローチやディミニッシュドアプローチと同じです。
ディレイドリゾルブ Del
ディレイリゾルブとはアプローチ音がアプローチ先の音を飛び越えてから解決する方法です。少し遅れて(=ディレイ)解決する感じです。基本的に2度の動きです。
・全音下、全音上からのアプローチ (*その逆のパターンも同様。)
・全音下、半音上からのアプローチ (*その逆のパターンも同様。)
・半音下、全音上からのアプローチ (*その逆のパターンも同様。)
・半音下、半音上からのアプローチ (*その逆のパターンも同様。)
アプローチ先に注意が必要です。ファ→ラ→ソの場合、ファとラは2音ともソへのアプローチです。通常のファ→ソと解決するところを勢いでラまで飛び越え、ソに戻ります。
クロマチックアプローチ以外は同じ種類のアプローチを避けましょう。ドミナントやディミニッシュドなど異なるアプローチ方法を組み合わせた方が解決感が強く出ます。
ディレイリゾルブは3音以上でも可能ですが、3音以上となるとアプローチの感覚は薄くなります。
まとめ
ノンコードトーンがどの音へアプローチするのかを常に意識しましょう。アプローチ部分のコード表記は実用段階では特に書く必要はなく、省略されます。アドリブの中で使われることも多いです。
参考・出典
・「作曲基礎理論 〜専門学校のカリキュラムに基づいて〜」井原恒平 (Amazon)
・「Berklee ハーモニーに新しいカラーを加える リハーモナイゼーションテクニック」エー・ティ・エヌ (2006/6/22)(Amazon)