ハモリとコーラス

メロディ自体の動きを直接反映させるパートとしてハモリ(単にハモとも言う。ハーモニー・和声が由来)があります。ボーカルに対するボーカルのハモリはコーラスになるのでコーラス一般についてもまとめます。

よく使われる三度上のハモリ

メロディに対して綺麗にハモリ続ける単旋律はメロディを形作る1音1音に対して同距離の協和音程を保つように作ります。結果として決まった間隔でずらしたものとなり、よく使われるのは3度上・6度下の音程です。5度上・4度下は倍音として既に存在しているため3度ほど充実した響きにはなりません。

ハモリのための同距離を保つことにどの程度こだわるかを一番考えなくてはいけません。その時々のコードとの関係で何度のハモりにするのかを考えて当てはめていきます。うまくいく場合もありますが、アボイドノートになるなどうまくいかない場合もあるからです。

3度の間隔の中であれば時々4度の距離を。5度の間隔が続いているのであれば時々4度か6度の距離の音を様子を見ながら挟みます。

ハモリはサウンド全体の印象を決定づけるものというよりも、メロディラインそのものを装飾するためにあります。そのためメロディを装飾する要素としてのハモリのパートでも動きに変則性を持たせた方が複雑で面白いメロディが作れます

多くの場合、ハモリ無しのブロックとハモリ有りのブロックで対比を用いてハモリのある部分を引き立たせるような使い方をします。あるセンテンスだけハモリを入れるという使い方(アレンジ)が効果的です。

原則としてハモリをつくるフレーズはメロディよりも目立って聴こえてはいけません

2つ以上のハモリパート

ハモリはメインメロディに対して1つだけとは限らず、さらにもう一つのハモリパートが加わることもあります。この場合は更に3度ずらすか、メインメロディを挟んで反対側に3度ずらしを行うか選びますが、3つのラインの外側同士は5度になるようにします。しかし、5度といってもメジャースケールではIVとVIIの関係にある減5度(トライトーン)音程は敢えてその響きを求める時以外は避けるようにしましょう。完全5度の中の減5度は異質な響きをもたらします。

基本的には響きの中で4度や6度の関係にするのが一般的で、ハモリのラインが元のラインよりも平坦で動かない方向に調整するとうまくまとまります。

敢えてぶつけるハモリ

実際のコーラスアレンジにおいて、積極的にテンションを取り入れることによって2度のぶつかりを好んで発生させる事があります。2度でぶつかった音はその後3度へと解決させることもありますが、そのままとなることもあります。

・出だしでぶつけてその後解決するパターンでは同じ音が続く流れの中では不安定にならず、ぶつかった響きを活かす事が出来ます。
・ハモリの出だしがユニゾンでその後2度の関係になるというパターンもよくあります。

同じ高さの音を継続して鳴らす分にはそれほど難しいことではなく、むしろ結果としてその音が9thになったり、11thになったりすると曲の面白みが増します

動かないハモリパート

上下に動くメロディラインに対してほとんど上下しない単音のハモリを当てる場合があります。結果的に2度のぶつかりをもたらすことも多いのですが、テンションとなったりそこまでの流れによっては解決しなくても自然な響きに収まる事があります。

主旋律に対して2ラインのハモリを付ける場合など、3度で同じように上下にハモリを付けようとするよりも、動かないハモリのライン(声部)を含めた方がより効果的に、まとまった響きになるのでよく活用されています。

コーラスについて

主旋律、メインメロディーに対して同じ符割りを持ち重なっていく、いわば歌寄りのハーモニーを付けるのがハモリとすると、コーラスは伴奏側のパートで、大まかな符割りで演奏される複数声部を持つパートです。

ハモリは歌詞を伴いますが、コーラスは歌詞を伴わずアー(Ah-)とかウー(Woo-)などと表現することが多くなります。

標準的なポピュラー音楽におけるコーラスはコードバッキングの発想を使って、単純に和声感を増幅するものです。最も単純な例でいうとコード毎に長い音符のみ、という構成も充分あり得ます。

工夫をする際にはセブンスやテンションからの解決の響きを長い音価で作り出していく感じにします。同じ音が連続するのではなく符割りの通りに音が変化しテンションが解決したり、協和していた音が敢えてぶつかる響きに変化することもあります。

結果的にテンションが含まれる音の方がブレ幅や音の充実感が豊かになります。声楽の場合は音程が不安定でフワフワした響きが好まれることもあり、ギチギチに9thなどのテンションを譜面で指定するとかえってカオスなことになったりします。

コーラスの場合は声部はできるだけ動かさず、結果として3rdの音が抜けたり、次のコードに対して9thや11th,6thといったテンションなどの音になっているのが良いといえます。

ハモリ:まとめと雑学

・歌詞ベースが単なるハモリ。古典的には歌詞に合わせる手法で、歌詞の中に「二人で〜」とか「一緒に〜」という箇所があったらその部分だけハモリを入れたりしていた。最近は1番と同じ場所であれば2番は歌詞を意識せずともよくなった。
・ハモリの中でもコーラスはメロディ・歌詞・符割りに合わせて単に和音やコードを「アー」とか「ウー」とか歌うもの。
上手にハモリを入れられると楽器が増えたかのような充実感が得られる。
・テンションノートに無理に3度でハモリを合わせようとしなくても良い。ハモリは無理をしないことが重要。協和を重視
・ハモリをした結果として音がそのコードに対して6thや9thになるのはまだ良くて、最もいけないのはCに対してFをつけるといったようにアヴォイドの響きになってしまう事。ハモリは響きを悪くしてはいけない
・日本は律儀に全て3度のハモリで合わせようとするが、無理が生じて歌い手が音を外したり混乱したりする結果になることも。逆に言えば、音がずれている違和感を感じながらも、それでもまぁいいか、となってしまうのが日本のバンド。ハモリとコーラスに対して曖昧さが許容されると言える。
・海外は3度の音間隔のハモリにこだわらず、4,5,6などハモる音は他にもあるじゃん!と全くメロディに合わせない選択もする。
・メロディにこだわりすぎて、格好良さを追求しすぎて歌い手の事を考えていない(歌い手に無理をさせてしまう)パターンとして、歌うのが難しいパターンを含むコードの中に突如テンションなどのノンコードトーンを歌うように指示することがある。作曲するときの注意事項。