これまでいくつか代理和音について扱ってきましたが、ここでもう一度まとめてみます。
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代理和音の条件は共通音が半分以上あること
調性内にはトニック、ドミナント、サブドミナントがあり、それぞれI,V,IVというコードが割り当てられています。ただ、ダイアトニックスケール一覧を見て分かるように、他のコードもこれらの代理として同じ機能を持つコードがあります。
I(T) – VIm (IIIm)
V(D) – VIImb5 (IIIm)
IV(SD) – IIm
これらは親分子分みたいな関係で、乱暴に言ってしまえば構成音がだぶっているもの同士だから響きも似ている=同じ仲間に属するということです。
セカンダリドミナントの代理和音
そっくりさんとして使われる代理和音の中にはセカンダリードミナントの代理和音もあります。むしろ普段私たちが聴くような音楽で完璧にダイアトニックコードの調性内にとどまっている曲は少なく、調性外和音の中でセカンダリドミナントは最も慣れ親しんだ和音です。そのセカンダリードミナントはノンダイアトニックコードであること、主和音に繋がっていくドミナントコードであるのが特徴ですが、ドミナントの核であるトライトーン音程(3rdと7th)さえ含んでいればそれを代理和音(そっくりさん)として連れてくることも可能になります。
トライトーン音程を含む和音は少なく、セカンダリドミナントの代理コードは解決する先のコード(仮のI和音)の半音下のdim7コードが多く使われることとなります。例)D7→Gであればファ#とドを含む和音なら代理になり得る。解決先のGの半音下のGbdim7がファ#とドを含みD7のそっくりさん(代理和音)となる。
仮の主和音に下から半音下で繋がるようにdim7を入れると特に滑らかな繋がりが実現出来ます。
調性外では無い元々のドミナントセブンスコードも同じ原理で主和音の半音下のdim7コードが代理として使えます。
Key=C G7→C Bdim→C
終着点は同じ
コードが解決する先、終着点がそのコードの使われた背景を知る手がかりとなります。終着点に元々繋がるコードは何だったのかを念頭に置き、闇雲に調性外和音を使うのではなく、本来使われるコードの代理として使っているんだな、今扱っているコードはそっくりさんで代理で出演しているんだな〜という感覚を持ちましょう。
サブドミナントマイナーの場合はどうなるか。
サブドミナントマイナー(IVm→I)はセカンダリドミナントに次いでよく聴かれる調性外和音です。スケール外の音が主和音(I)に上手に流れる動きを作り出し、ドミナントのような調性を固める働きをします。そしてサブドミナントマイナーの魅力は、普段はすごく使いづらいm6やmMaj7の音をメロディとのぶつかりもなくスムーズに使えるようになるところにもあります。既に基本のトライアドでも調性外の音が含まれるIVmですが、その基本の音に調性外の成分を一つ足すことが感覚的に受け入れられる事に繋がります(重大な変化に聞こえないから馴染みやすい)。
このサブドミナントマイナーの最も重要な音は、ノンダイアトニックコードでサブドミナントマイナーたらしめるbVIの音だけです。bVIの音に加えて1音IVmと共通の音があれば充分に代理和音となります。
具体的にはVIbやIIbのコードがbVIの音ともう一つの共通音を持つIVmの代理コードということになります。IかIIImに解決するので、自分で楽器を弾いて響きの違いを試して見ましょう。
C→Fm→C
C→Ab→C
C→D♭→C
サブドミナントマイナーはセカンダリドミナントの代理和音よりも種類が豊富ですね。
IVm6をサブドミナントマイナーの形として考えるとVIIb7も含まれる構成音が重なる代理和音となります。VIbとIIbは4和音にするとメジャーセブンスとなりますが、VIIbの場合はセブンスコードとなります。あくまでもサブドミナントマイナーの代理なのでIやIIImに解決します。ドミナントモーションをするわけでは無いのにセブンスコードが出てくるので非常にユニークな響きを持ちます。こうしたドミナントモーションをしないセブンスコードはブルース進行などにも見られ、ブルース音楽によく馴染む形です。
■備忘録
・ロックっぽさを入れたいのなら代理和音を活用するとワイルドさ、不良っぽさがでて良い。ロックだとV7がIに解決するような普通の進行だと甘っちょろいと捉えられる。
・普通の進行とはV7→Iみたいなオーソドックスな進行のことで、ポップス的な甘さ、アイドルが歌手デビューする時のような感じ…らしい。