もう一度ブルーノート アメリカのカントリーミュージック

もう一度ブルーノート アメリカのカントリーミュージック

歴史的な観点からアメリカで生まれたブルーノートについて見ていきます。

ヨーロッパからアメリカに

アメリカで発達し、生まれた音楽は元をたどればヨーロッパの移民から伝来していたものです。ではどういう伝えられ方をしていたのでしょうか。ヨーロッパの宮廷貴族がたしなむ音楽というのがクラシック音楽ですが、アメリカ大陸に移住する人達は本国ではクラシック音楽をたしなむ余裕などは無く、伝来した音楽も完璧な形で伝わったとは考えにくい状況でした。そのため、新大陸への移動は必然的に音楽の発展に大きな変化をもたらす事になりました。

アメリカは移民の国 カントリーミュージックは素朴な伝統音楽

アメリカは移民の国であり、様々な国の出身者達が持つ素朴な伝統音楽もアメリカの音楽を作る上で影響してきます。ヨーロッパから伝来したクラシック音楽の記憶と、移民達が持つそれぞれの出身国のメロディ、それらが合わさり音楽が発展して行ったと考えられます。

I→V→Iといったごくごくシンプルな音作りで曲が構成されたのは西洋音楽の記憶を持つ彼らにとっては不思議ではありません。かろうじてドミナントモーションが曲を邁進させる骨格として残っています。カントリーミュージックでは極めてシンプルな、IとIVとVだけのコード進行で出来ていることがあり、中にはサブドミナントすら出てこない2コードで出来た曲もあります。西部開拓時代を通してアメリカの代表的な音楽はこうしたシンプルな飾らない音楽でした。

ブルーノートについて 半音下がるという訛り

ここでブルーノートです。アメリカにはヨーロッパからの移住者に加え、奴隷として強制労働される黒人達も存在していました。彼らはアフリカから連れてこられたので身に付いていた音楽の記憶はアフリカ独特のものでした。アメリカ文化に放り込まれた彼らはやがて西洋由来の西欧的な感覚を身につけていきました。

ここで面白かったのが、西洋音楽のドミナントモーションで欠かせない導音が、彼ら黒人達にとっては感覚的に馴染みにくいものだったということです。導音は主音へ向かうための力が強い音ですが、見方を変えてみれば主音との距離の近さから非常に主音と紛らわしい音だと解釈できます。より主音と違いを持たせるために、より主音から離れようとしました。黒人達の感覚にとっては、半音繋がりのインターバルは紛らわしいもので、結果的に半音繋がりがあるVIIとI、IIIとIVのインターバルはVII♭、III♭として時々半音下がって(フラットして)演奏される事態になりました。

本能的につい半音下がってしまう、フラットした音になってしまうのは音楽における訛りみたいなもので、このIIIとVIIのフラットしてしまう訛りをブルーノートと呼びます。より厳密に言えば西洋音楽でいうきっかり半音下がりではなく、それこそ微妙な下がり具合で、便宜的に半音下がりとしています。

ブルーノートスケールについて

ブルーノートを含んだメジャースケールは、常に一定の形を保つのでは無く場合によっては変化する可能性があるスケールです。ブルーノートを含んだスケールをブルーノートスケールと言います。元々ブルーノートは期せずして起こる訛り。伴奏のコードがフラットしなくても歌の方でなまってしまうことがあります。こうした複数のスケールが同時に存在する複調性も発生したりします。

マイナー調の借用和音との違いは、マイナー調はVIの音が♭しますが、ブルーノートにはVIの♭は含まれないという点にあります。

ブルースでセブンスコードばかり使う理由

結局ルートの下の半音下の音に違和感を感じるからブルーノートのような半音したへの訛りが生まれました。メジャーセブンスコードは必然的にルートと半音下のM7の音が同時に鳴る和音です。黒人達はついこのルートの半音下のM7の音を半音下に鳴らすようになりました。メジャーセブンスのM7を半音下げるとセブンスコードになります。ブルーノートスケールによる音楽の代表がブルースです。即興で演奏されるブルースにおいてドミナントではないI7、IV7というセブンスコードが多用される理由はこのメジャーセブンスの訛りであると考えられています。

奴隷から解放された後も黒人達は細々と農園で働き、黒人達の酒場でブルースは歌われました。奴隷時代の労働歌として同じ歌詞を何度も繰り返して歌う要素が多い音楽でした。

ブルースは一般化していった。

黒人達にとっては自然な流れで生み出されたブルース音楽は伝統的な西洋音楽に親しんでいた白人達にとって非常に新鮮なものとして聞こえました。人種間のわだかまりもあって最初はすぐには交わらなかったものの、徐々に黒人音楽を歌う白人や黒人音楽で商業的な成功を収める者もで始めました。ブルースに傾倒する白人ミュージシャンも出て、ブルースは一般的なものになっていきます。

ブルースの訛りの半音は西洋音楽での正確な半音下に定義され、下がる必要の無い時でさえ敢えてブルーノートの半音下がった音を使うようになりました。ダイアトニックコードの中でIIIやVIIを含んでいたら半音下げるという具合です。

マイナー調のブルーノート V♭

ブルースはメジャースケールで使われるものでしたが、西洋の伝統的な音楽がリアルタイムでアメリカに入ってくるようになると、こんどはマイナー調でもブルース特有の響きが組み合わされるようになりました。

マイナースケールで重要なのは導音やドミナントモーションなので、矛盾無くブルースを取り入れるには導音やドミナントを残しつつブルース特有の音(セブンスコード)を使う事になります。

マイナー調のブルースではダイアトニックに加えて♭III7と♭IV7とII7がよく使われます。

ブルーノートにVが半音下がるのが含まれているのもマイナースケールで使う事を考えてのことです。Cメジャースケールのドレミファソラシドを平行単調のAナチュラルマイナーで見るとラシドレミファソラとなり、CメジャースケールでのブルーノートIIIb(ミb)とVII(シb)はAではII(シb)とV(ミb)になります。マイナースケールでブルーノートを使う場合にマイナースケールから見たVがブルーノートとして半音下がります。

実用上、メジャースケールのダイアトニックスケールをIII♭、V♭、VII♭したものがマイナー調のブルースで使えるスケールとなります。

II7は特にV♭という響きを持つ為、マイナー調のブルースで使われます。ブルーノートのメロディと合う上に、ドミナントモーションを強く打ち出すことができます。