オルタードコード、ドミナントコードのオルタード化について 使えるコードスケールのまとめとナチュラルテンションとオルタードテンションについて。

ドミナントコードのオルタード化について

今回はオルタードコード、ドミナントコードのオルタード化やナチュラルテンションとオルタードテンションの違い、オルタードコードでどのコードスケールが使えるのかについてをまとめました。全てのメジャースケールとマイナースケール3種を暗記していれば今回紹介するコードスケールについてすぐに求めることが出来るでしょう。

オルタードって何?#や♭に移動して変位した音のこと

オルタードとは、alter(変化・変える)という英語が元になっていいます。オルタードテンション(Altered tension)とは変位したテンションという意味です。#や♭をつけて、ダイアトニックコードにない音をテンションとして扱う場合、変化させたテンションをオルタードテンションといいます。例えばG7(♭9)のラ♭は、Cメジャーのダイアトニックコードには存在しない音ですね。G7に♭9thの音はラの音を半音下げて♭に変化させた音なので、オルタードテンションといいます。

一方でナチュラルテンションという概念もあります。こちらは#や♭をつけて変化していないテンションのことです。例えばダイアトニックコードのG7(9)のラは9thですが、ラの音はCメジャーのダイアトニックに含まれている音なのでナチュラルテンションです。

ちなみに理論書によっては、9th,11th,13thといった♭や#がつかないテンションをナチュラルテンション、♭9th,#9th,#11th,♭13thのように#や♭がつくテンションをオルタードテンションと定義しているものがあります。またダイアトニックコード上に構築したテンションに#や♭で変化させたテンションのみをオルタードテンションとして説明する書籍もあります。

例えばリディアンスケールのFM7の#11thやロクリアンスケールのBm7-5での♭13は完全なダイアトニックコード内の音ですが、#,♭がついているのでオルタードテンションと説明する書籍もあるという事です。

G7の#11はオルタードテンションとして扱う書籍と扱わない書籍があります。Gにおける#11であるド#は、ドを半音上げて変化させたのでダイアトニックコードの音ではありませんが、これをナチュラルテンションと扱う人もいます。その根拠としてG7が構築されるGミクソリディアンスケールにおいて、ドの音はアボイドだから、テンションを変化させるのがオルタードテンションであって、アボイドを変化させるのはオルタードテンションとは言わないという理由です。これはオルタードアボイド?という言い方になりますが、音を変化させたことには変わりなく、#11というテンションで扱うことになるのでオルタードテンションと呼ぶ人もいます。なお、この変化させた後のスケールはリディアンドミナントスケールというメロディックマイナーの第4音から転回させたスケールになります。

オルタードコードって何?

オルタードコードとはオルタードテンションを使用して作ったコードのことです。オルタードコードはジャズという文脈のみならず、ポピュラーからアニソン、近代フランスに見られるクラシックや劇伴などあらゆる音楽に登場している一つの作曲テクニックです。いつでもどこでオルタードコードを使うことができますが、使う際にはどのコードスケールを使っているのかを意識する必要があります。

テンションをオルタード化するには。

ではテンションをオルタード化するに当たってどうすれば良いのかについてまとめます。

前提として、♭9,#9th,#11th,♭13thをそれぞれオルタードテンションとして扱います。

■9th
9thは♭9thと#9thに変化することができます。

■11th
使用するスケールによってはアボイドも出てくる11thの音は、#11thに変化することができます。また、♭11thというテンション音はありません。これは11thが半音下がると第3音と同じ音になってしまうからです。

■13th
13thは♭13thに変化できます。#13thというテンションはセブンスと同じ音になるので存在しません。

1つのコード内でのナチュラルテンションとオルタードテンションについて

同じ度数のナチュラルテンションと変化させたオルタードテンションは同居することが出来ません。オルタードテンションはナチュラルテンションの変化した音という扱いなので、別のものではなく同じものの別の側面と考えます

一方で、9thと13thなどで度数の異なるテンションの場合はナチュラルテンションとオルタードテンションが同居することが可能です

ドミナントコードをオルタード化してダイアトニック以外の音を使おう

ドミナントコードをオルタード化する(オルタードテンションを加えて使う)ことで、ダイアトニックコード以外の音を使うことができます。特にドミナントコードは他のコードと違って制限無しに♭9,#9th,#11th,♭13thの4つのオルタードテンションを使うことができます。これにより、音の広がり、調性感の拡張、豊かな響きを使えるようになるわけです。さすがドミナントコード!

オルタードコードのコードスケールまとめ

ここで紹介するオルタード系のスケールは、どのテンションの時にどのコードスケールが使えるのかが即時に分かるようになりましょう。それぞれのスケールが持つテンション構成やアボイドノートとなる音をしっかりと把握しなくてはなりません。常にコードスケールを意識することで、コードネームは同一だけれど、コードスケールが違う(使える音が違う)パターンをたくさん練習しましょう。

・9th,13th ミクソリディアンスケール(完全5度下のメジャースケール)
9thと13thは完全なダイアトニックコードのため、通常通りミクソリディアンスケールを使うことが出来ます。○7(9,13)を使う時はメロディーで9thや13thを積極的に使うことでテンション感を強く表現できます。

・♭9th,#9th,#11th,♭13th オルタードスケール(半音上のメロデックマイナースケール)
♭9th,#9th,#11th,♭13thの組み合わせのオルタードテンションを使う場合はオルタードスケールを使います。○7(♭9,♭13),○7(♭9,#11,♭13)、○7(♭9,#11)がよく使われる組み合わせです。オルタードスケールはアボイドもナチュラルテンションも無いのが特徴のスケールです。求め方は半音上のメロディックマイナースケールであり、Gオルタードスケールを見つけたい場合Gの半音上のG#A♭のメロディックマイナーを第7音から弾けばGオルタードスケールになります。スケールの中に完全5度の第5音をもたないことが特徴で、ダイアトニック以外の音がたくさん出てくるスケールなので常にスケールの構成音を意識して使いましょう。

・♭9,♭13th HMP5Bスケール (完全5度下のハーモニックマイナー)
♭9th、♭13thの場合、HMP5Bスケールを使います。○7(♭9,♭13)、○7(♭9)がよく使われます。HMP5Bはハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウの略で、ハーモニックマイナースケールの第5番目の音を起点として並び替えたものです。♭9thと第3音の間に増2度音程があるのが特徴的なスケールです。

#9thと#11thを使わずに♭9thと♭13thのみでオルタードテンションを使う場合、HMP5Bと区別がつかなくなるため、♭9thと♭13th以外の音をどう扱うかがポイントとなります。メロディーでHMP5Bスケールを使っているのに、コードに#9thや#11thを入れたオルタード・コードを使ってしまうコードとスケールが噛み合わなくなります。#9thや#11thはHMP5Bスケールの中に存在しない音なので、使うことが出来ないという訳です。

大前提として、コードが同じでも割り当てるコードスケールによって使っていい音は変わってきます作曲していく中で今自分が使っているコードスケールを常に意識することが最も大切です。それによって意識して響きや調性感をコントロールしていきましょう。

・♭9th,#9th,♭13th スパニッシュ8スケール
スパニッシュ8スケールは、HMP5Bスケールに#9thの音を足したものです。#9thが追加されることで、HMP5Bにあった増2度音程がなくなるのがポイントです。○7(♭9,♭13)、○7(#9th)がよく使われています。スペインのフラメンコなどの民族音楽で使用されるスケールで、8音で成り立っているのが特徴です。

ちなみに#9thを含むコードはロックではジミヘンコード(Hendrix chord)とも呼びます。ヘンドリックスのPurple Hazeなどでその特徴的な響きを聞くことが出来ます。サイケデリックロックでもよく使われる非常にダーティーな感じがするコードですが、もちろんロック以外でも使うことが可能です。

スパニッシュ8スケールでは、#9thを使わないとHMP5Bと全く区別出来なくなるのに注意しましょう。HMP5Bとスパニッシュ8の違いは#9thの音の有無だけです。だから#9thが無いとスパニッシュ8らしさが出ません

メロディーで使う場合はなるべく2度上行をしましょう。3度以上跳躍する場合、元の調から遠い響きになるので、不自然なメロディーにならないために熟練が必要となってきます。実際に色々試して見ましょう。

・9th、♭13th ミクソリディアン♭6スケール 完全5度下のメロディックマイナー
9th,♭13thの時はミクソリディアン♭6コードを割り当てることが出来ます。ミクソリディアンの6番目の音が半音下がった(♭)スケールで、○7(9,♭13)、○7(♭13)がよく使われます。完全5度下のメロディックマイナーから並び替える方法が見つけやすいです。例えばGミクソリディアンスケールを見つけたければ、完全5度下のドからスタートするCメロディックマイナーをソから並び替えればそれがGミクソリディアン♭6コードになります。♭13thとナチュラルテンションである9thが同居するのがポイントです。

ミクソリディアン♭6は、♭13thのみがダイアトニックコード以外の音となります。残りは全部ダイアトニックコードのため、元の調から外れた感じが少なく元のキーに馴染んで使うことが出来ます。メロディックマイナー出身のスケールなので、独特の不思議な響きを持ちます。

・9th,#11th,13th リディアンドミナントスケール 完全4度下のメロディックマイナー
9th,#11th,13thではリディアンドミナントスケールを使うことが出来ます。○7(9,#11)、○7(9th,#11,13)がよく使われます。メロディックマイナー出身のスケールで、完全4度下のメロディックマイナーの第4番目の音から並び替えたものがリディアンドミナントスケールになります。例えばGリディアンドミナントスケールを見つけたければ、Dメロディックマイナーをソを起点にして並び替えればリディアンドミナントスケールになります。リディアンスケールの第7音を半音下げたスケールと探しても見つかります。

9thと13th、#11thが共存するのがポイントです。テンション構成音がリディアンと全く同一なので、響きも似ています。アボイドが全くないスケールなので非常に明るい響きになります。

・9th,#11th,♭13th ホールトーンスケール
9th,#11th,♭13thはホールトーンスケールを使うことが出来ます。○7(9,#11)、○7(9,♭13)がよく使われるコードです。ホールトーンスケールは全音スケールであり、すべて全音間隔で構成されたスケールです。出身キーをもたず、ホールトーンを使った箇所は調性感が失われ、独特の浮遊感が表現できます。癖は強いですが、ここぞという場所に効果的に使うことでカッコイイ響きを得られます。BGM系の楽曲では、ホールトーンスケールの無調性感を利用した不思議な雰囲気、神秘的な雰囲気の曲がたくさん存在します

・♭9th,#9th,#11th,13th コンビネーションオブディミニッシュスケール
♭9th,#9th,#11th,13thはコンビネーションオブディミニッシュスケールを使うことが出来ます。♭9と13thの組み合わせはコンディミスケールのみで実現可能です。○7(♭9,13)、○7(♭9,#11)がよく使われます。

ディミニッシュコード(減7の和音)を組み合わせたスケールで、半音ずれたディミニッシュコードを重ね合わせることで成り立つスケールです。Gコンディミならば、GdimとG#dim(A♭dim)が重なったスケールです。音程関係では「半音→全音→半音→全音→半音→全音→半音→全音」というシンメトリックなスケールになるのが特徴です。♭9と13thが同時に使えるのはコンディミスケールのみなのでその特徴を活かしていきましょう。

オルタードコードは他のキーの響きを持つ

オルタードコードにおいて使用できるコードスケールの多くはそれぞれ自分の出身キーを持っています。

そのコードスケールを使った箇所は、そのコードスケールが属している出身キーの響きを借りてきていると考えることができます。出身キーを持っていないのはホールトーンスケールとコンビネーションオブディミニッシュスケールの二つだけです。

作曲する時には、コードスケールの出身キーを明確に意識して使いましょう!そうすることで、転調や調性の広がりや響きの豊かさを意図的に作り出すことが出来るようになります。

■調性の揺らぎ
例えばCメジャーで曲を作っていたとして、調に含まれない#や♭を用いた箇所は一時的ですが他の調の響きを使っていることになります(これは「借用和音」「部分転調」ともいいます)。こうした元のスケールにない音を使うことで意外性や、キーが変わることによる格好良さを演出することが出来ます作曲が上手い人は、この一瞬だけ他のキーに調性を揺らすことが上手に出来ています

調性を揺らして不安定にさせたり、逆に安定させたりするテクニックは高度な作曲の必須テクニックでもあります。曲調の揺れをコントロールできることで曲のさまざまな雰囲気演出や多彩さ、美しさに繋がります。

人はギャップや意外性に魅力を感じます。Aメロは安定、Bメロで不安定、サビで安定して綺麗なメロディーを歌い上げるとき、どのようにBメロの部分を不安定にさせるかが悩みどころであり作曲者の技の見せ所でしょう。

このギャップや意外性を出すのにオルタード化や転調などを利用した調整の揺らぎを使います。自由に調性を揺らしていくためには、ダイアトニックコードやオルタードテンションなど調性外の音をどう使うかを常に意識して曲を組み立てる必要があります。