ドミナントモーションとII-V進行の概要

ドミナントモーションとII-V進行の概要

今回は音楽を考える上で最も重要な概念であるドミナントモーションとそれに付随するII-V(トゥーファイブ)進行についてみていきます。

ドミナントモーションは最もその曲を印象づける重要な概念

ドミナントモーションとはドミナントの和音の動きのことで、ドミナント(=支配的な)という意味の通り、音楽の世界でもその調を決定づける支配的な役割を持っています。ドミナントモーションはコード進行の可能性を広げ、転調のきっかけやオルタードなどで豊かな響きを持たせたり、II-V(ツーファイブ)進行に発展したりと作曲を考える上で非常に大きな可能性を持っています。

■ドミナントモーションの定義
ドミナントモーションはドミナントセブンスコード(V7)からトニック(I)に移動する音の流れの事です。
1, ドミナントセブンスコードから開始する。V7の和音。
2, 根音が完全4度上(完全5度下)に進行する。
3, 3全音(トライトーン)が解決する。

3全音(トライトーン)音程とはメジャースケール上に1つしかない音程のことです。Cメジャースケールならファとシの音程のことで、非常に不安定な響きを持ち、ドミナントセブンスコードはこの不安定な響きを解決するべくトニックに行きたい、安心したいといった聴覚的な印象を発生させます。

■具体例
Key=C上のV7であるG7なら、
ファ→ミ
シ→ド
といった感じで次のトニックであるI(C=ドミソ)解決することができ、これをドミナントモーションといいます。

解決先のコードは、Iのトニックであれば、Im7-5,Idim以外を除いてドミナントモーションの解決先になることができます。トライトーンが解決しない、例えばG7→Cdimはコード進行としてはアリですが、ドミナントモーションとは見なされません。

あくまでもトライトーン音程があってそれが解決するという流れが重要です。このトライトーン音程→トニックコードへの解決が調を決定づけます。

メジャーキーでのII-Vとドミナントモーション

メジャースケールのダイアトニックコード上にV7は1つしかない特殊なコードとなっています。V7→I(機能がドミナントからトニックへ移動する動き)がメジャーキーにおけるドミナントモーションです。非常に強力な進行で、音楽において最も多用されるコード進行の一つとなっています。

V7→Iの動きは完全終止とも言って、特に根音の完全4度上行は、非常に強力な動きとなります。

II-V(ツーファイブ)進行はドミナントセブンスコードV7の完全4度下であるIIm7を用いて、IIm7→V7というコード進行を作るコード進行のことです。応用の幅は極めて広く、コード進行における王道となっています。

C AM Dm7 Gy C
I VIm IIm7 V7 I

よく使われるコード進行であるI-VIm-IIm7-V7(イチロクニーゴー)進行の中にもII-Vは含まれていますね。

・偽終止のドミナントモーション
ドミナントからトニックに進行することが広義のドミナントモーションなので、D→Tという進行を満たすものであればドミナントモーションと言うことが出来ます。そのため、V7から同じトニックの代理和音へ進むことができます。

特にV7→VImは全3音の解決が可能です。クラシックの理論では全3音(トライトーン音程)の解決を優先するので、全3音の解決がないV7→IIImの進行は偽終止と見なされませんが、ポピュラー理論では同じトニックの進行としてドミナントモーションと見なします。

マイナーキーでのII-V(ツーファイブ)

マイナーキーでも基本的にはメジャーキーと一緒です。ただ、ナチュラルマイナーの場合IIがIIm7ではなく、IIm7-5となり、VもVmになっています。そのため、ドミナントモーションをさせるため、ハーモニックマイナーかメロデックマイナーのV度であるV7の和音を使うことが多いです。

Tips:ドミナント進行の原理

ドミナントは倍音というある音(基音)が鳴ったときに、同時に発生している整数倍の音が大きな要因となっています。100Hzの音が鳴ったときは、2倍音の200Hz、3倍音の300Hz、4倍音の400HZ…といった感じで倍音が発生しています。

例えば基音がドであれば、倍音列は「ドドソドミソシ♭ド」という風に発生します。この一番下のドを鳴らしたときに、構成される倍音列からできるコードを考えるとC7「ドミソシ♭」となります。実際にはドしか鳴らしていないつもりでも、(基音よりは小さい音とはいえ)倍音を含めると3全音を持ったドミナントセブンスコードが形成されているのです。

ドミナントセブンスコードはメジャースケール上のV度上のみに現れるコードなので、例えばC7というコードの存在だけでこの曲はFメジャーキー出身の箇所が使われていることが分かります。

ドミナントセブンスコードは自らが持つ不安定な全3音(トライトーン音程)の解決のため、トニックへ強く進みたがる性質があることを覚えておきましょう。

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