躍動感のあるベースの動きを実現するために。ベースラインのペンタトニックスケールについて。

ベースはルートと5thだけの基本パターンで演奏することが最大の役割です。ベースは原則として余り動く事は無いパートで、動くとしても基本のリズムを刻む動きに加えて次のコードへのアプローチフレーズを絡ませるに留まります。しかし、現実の演奏ではベースは激しく動いている事も多く、今回はそれらのよく動くベースについて見ていきます。

ベースの役割とは

ベースの役割は曲の土台部分として上部のコードや構造を支える事にあります。最も上にくるメロディとは異なり、ベースにはベースなりの動きに関しての決まり事みたいなものがあります。土台のベースは基本パターンを刻むため動きは少なく、上部の構造はアクロバティックに目立つような動きをするのが一般的です。

コードの基本リズムやパターンに忠実であることが求められるベースでは、メロディで許されていたテンションや半音関係、跳躍を多用する動きは避けるべきであると考えます。

これは突き詰めれば半音関係の音を排除することにも繋がります。M7とルートの半音すら避け、もちろんナインスやイレブンスなどのテンションも同様で、基本の三和音構成のルート,3rd,5thと半音関係にある音は排除することで、堅実な響き、土台の安定感がもたらされます。

このコードの基本に堅実な動きをベースに求めるとペンタトニックスケールと呼ばれる音階に沿ってフレーズをつくることがあります。次に紹介するペンタトニックスケールを使えば自動的に半音の繋がりを排除した形になります。

ペンタトニックスケールとは

ペンタトニックスケールとは5音で構成される原始的な音階で、世界の至る所で見られる音階です。民族音楽などを作るときにはお世話になることでしょう。

メジャーペンタトニックスケールは以下の法則をもちます。
I,II,III,V,VI
これはメジャースケールの音階からIVとVIIを抜いたヨナ抜き音階で、このスケールに沿って弾くだけでどこかエスニックな感じがでます。

ペンタトニックスケールは演歌や中国音楽、スコットランド民謡などの基本音階です。4と7の音がそれぞれ消えることで半音続きの音の繋がりがなくなります。

これは見方を変えればマイナースケールから2,6の音を抜いたマイナー系のスケールと見なすことが出来ます。マイナースケールを基準に作り出したペンタトニックをマイナーペンタトニックスケールといいます。

平行調の関係はペンタトニックスケールにも引き継がれます(CペンタトニックスケールとAマイナーペンタトニックスケールは主役が違うが役者は同じ関係)。

ペンタトニックスケールは、Aメロだけこのスケールをつかうなど局所に限定的に使うのが効果的です。

ペンタトニックスケールをコードスケールで考える

実際にベースラインを作るとき、調性のための基本スケールとしてペンタトニックスケールを使うと、IVやVIIの音は使えない事になります。そのため、これらの音を使う時は半音繋がりとなるペンタトニックスケールの音を使わないことで対処します。

・IVを使いたいときIIIは外します(下属和音IV)。
・VIIを使う時、Iを無くします(属和音V)。

ベースには半音繋がりを排除するという原則です。結果的にはIVやVを出発点としたペンタトニックスケールを使っているということになるので、コードスケールとしてペンタトニックスケールを使っていることになります。(*コードスケールとは一つのコードごとにどのスケールを使うのかを当てはめること)

それぞれメジャースケールにはメジャーペンタトニックスケール、マイナーコードに対してはマイナーペンタトニックスケールを当てはめます。それぞれ平行調の主和音として、メジャーペンタトニックを並び変えただけのマイナーペンタトニックスケールを当てはめる事が出来ます。

・IImに対する場合はIIを出発点としたマイナーペンタトニックスケール=中身はIVを出発点としたマイナーペンタトニックスケールと同じ
・IIImに対する場合はIIIを出発点としたマイナーペンタトニックスケール=中身はVを出発点としたペンタトニックスケールと同じ
・VImに対する場合はVIを出発点としたマイナーペンタトニック=中身はIを出発点としたペンタトニックスケールと同じ

唯一VIIm(♭5)はペンタトニックスケールが当てはまらない形をしているため、ペンタトニックスケールの持つ堅実で地味なフレーズを作ることが出来ないコードとなります。言い換えると素朴さを出したいときにVIIm(♭5)は使う事が出来ないコードということです。

ペンタトニックスケールを活かしたベースラインの動きを具体的にどう使うか

ベースの跳躍進行はペンタトニックスケールによる順次進行として解釈するのが基本となります。

ベースラインはノンコードトーンは順次進行によってコードトーンへ解決する動きが基本原則です。メロディのように華々しく軽やかなフレーズは出せませんが、ベースにはベース特有のフレーズが生まれます。ダイアトニックスケールで見ると跳躍に見える進行でも、ペンタトニックで考えると順次進行となりますから、ペンタトニックの持つ独特の進行感が強く出ます。

バンドアレンジによるベースラインのフレーズ感はペンタトニックスケールによって作り出されていると言えます。

半音を嫌う響きと半音を活かした響きを曲中で使い分けましょう。

■半音を嫌う響き
→ロック、バンドサウンド的な響き、硬派、泥臭さ
 
■半音を活かした響き
ポップス、クラシック的、華麗、柔派的
(調性内の半音進行を積極的に使うダイアトニック的な色合いのフレーズ=ノンコードトーンは順次進行によってコードトーンへ解決します。)

原始的な音楽とは

ペンタトニックスケールと関連して、素朴で原始的、複雑になる前の音楽ほど民族や人類に共通する要素をもつ根本的な響きを持ちます。人によっては子供っぽく、聴く人に分かりやすく親切すぎてダサい響きに捉えられます。ペンタトニック的な音階を用いれば跳躍進行をベースで使う事が出来るので、音が上下に飛ぶことによる格好良さを出すことが出来ます。

クラシックとロック(ポップス)におけるベースに期待される役割の違い

クラシックはバスの動きにもメロディアスで動く要素が求められます。コントラバスやチェロを演奏したいという人も増えてくるものです。一方でロック(ポップス、バンドアレンジ)はベースの動きが制限され、ベースには目立たないことが要求されます。