【コード進行】コード進行の響き, 連結のヒントとアイディア,クリシェ,並行進行

今回はコード進行について連結響きの変化の観点からみていきます。

コード進行の基本的概念や終止形(カデンツ)などを扱った記事はこちら

強い進行と弱い進行と逆進行

コード進行にはいくつかの強弱があります。強い弱いは曲を聴いたときの響きの違いで、勢いのある感じか平坦な感じか、の印象に影響を与えます。

ダイアトニックコードをベースにして、強進行(完全4度上or完全5度下の進行)やSTM(ダイアトニックコード上の隣同士の進行)を加えるとやや強い響きとなります。

一方で機能和声でいうT,D,SDしか持たないコード進行は弱い印象をもたらします。さらに弱い進行には逆進行というアイデアがあります。

逆進行は強進行の逆の形で、完全4度下降するコード進行の事です。厳密な「逆進行」は基本的なカデンツ進行「T→SD→D→T」の逆の進行「T→D→SD→T」のことですが、ここでは一旦強進行の真逆を行くコード進行と捉えます。
C→G
F→C
強進行の逆をいく進行であり、コード進行の機能としても弱い印象をもたらします。どこかスムーズにいかないこの感覚を利用して、荒々しい感じを曲に出すことが出来ます。弱進行の持つ引っかかりや抵抗感がロックの雰囲気に合っています。

和音の響きの変化で違いを出す。

コード進行を組み立てる際はコード進行の響きの変化に注目することも実際の作曲過程では重要です。コードの響きを頻繁に変えていくと場面を変化させ、逆に響きを変えないと一つの聴覚的印象を引っ張るような感じがでます。

音の響きの変化が少ない
1,同じコードを続ける(C→C)
2,同じコード内で構成音が変化したものに進行する(C→add9)
3,同じコードの転回形に進行する(C→C/E)

音の響きの変化が大きい
1,機能が異なるコードに進行する(Key=C上のC→G)
2,同じ機能の違うコードに進行する(Key=C上のC→Am)
3,同じコードの転回形に進行する(C→C/E)

同じコードを続ける進行は上級者向け

初学者ほど1小節ごとにコードが変わる、変えなければならないと思い込んでいる傾向が高いようです。

C→G→Am→Fのようにどんどんコードが変わっていく曲も多いですが、上級者ほどコードをそのまま変えるというよりも、もっと微細な変化を使って響きの変化を作り出していきます。

同じコードを続けることは、最も響きの変化が少ない手法です。
テクノなどでは何小節も同じコードが続いたり、1曲まるまる同じコードのみで出来ている曲もあります。
コードが同じなので、リズムやメロディ、アレンジを工夫して曲を展開させていきます。

響きの変化テクニック1:同じコード内で構成音が変化したものに進行する

C→Cadd9など、コードの構成音のうちどれか1つ以上を変化させるとわずかに響きが変化します。微細な変化やグラデーションのようなコードの変遷をさせたいときによく用いられます。

クリシェという技法は、同じコードを連続で鳴らしつつ1音だけなどわずかな変化を続けていく手法です(基本的には一番上の音を順次進行させて変化をだします)。とても美しく高揚する感じが出せるでしょう。

コードをまるごと変えなくても、少し音を加えたり変化させたりするだけで響きの変化を出すことが出来ます。

響きの変化テクニック2:同じコードの転回形に進行する

C→C/Eなど、転回形を使うことでコードの最低音が入れ替わります。あるコードが鳴ったときの一番下の最低音(ルート音)はコードの性質を決定づける一番重要な音です。これを利用することで響きの変化をもたらせます。

響きの変化テクニック3:同じ機能を持つ違うコードに進行する

たとえばKey=CでのC→Amなど機能が同じであれば違う機能を持つコードに接続するよりも響きの変化を緩やかにすることができます。

響きの変化テクニック4:機能が異なるコードに進行する

Key=CでのC→Gなど最も変化が大きいのが異なる機能を持つ異なるコードへの連結です。響きや曲の流れの局面を変化させたいとき、流れに弾みをつけさせたいときに使います。

響きの変化テクニック5:更に変化を出したいとき

機能が異なるコードに進行するよりももっと大きな変化をもたらしたいときは借用和音、一時的転調といった発展的なテクニックを使います。サブドミナントマイナー(SDM)、裏コード、副属7の和音などのことで、これらのテクニックは本記事とは別にまとめています。

転回形のコードについて

転回形はコードの最低音が変わるので、コードの印象や性質をガラリと変化します。

Cの場合、ドミソですが、
C/Eとするとミドソとなり最低音がドからミに移り変わります。
最低音はコードの性質を決定づけるので響きや性質はCよりもEmにずっと近くなります。(CとEmの曖昧な響きになってくる。)
コードの機能も変化することがあるので転回形を使う場合は明確な意図を持った場合が多いです。

C Am/C F/C Dm7/C
このようにコード進行においてCの音をずっと低音で続けるといったアレンジが出来、安定感を出すことが出来ます。

根音以外の音が一番下にくることによって生じる和音の性質がぼやける効果を上手に利用しましょう。

クリシェ(Cliche)

クリシェ(Cliche)とはフランス語で常套句の意味を持つ言葉です。作曲技法としてのクリシェは同じコード内のどれか1つの音が半音で上行、または下行しながら繋がっていくコード進行を指します。

「常套句」の名前の通り、数多くの曲で使われ、なめらかなコード進行になります。半音ずつの変化を出すためにダイアトニックコード以外の和音が使われることもありますが、変化和音として扱います。

ダイアトニック並行進行について

カデンツを無視した並行に進行する特殊なコード進行で、ダイアトニック上に形成されるコードを並行で動かすことによってつくられます。「平行」との違いは、「並行」がダイアトニックに沿って動くのに対して「平行」はキーを無視してコードの種類を変えずに移動させるように動く物を指します。

C Dm Em F
並行進行(ダイアトニック上でスライド)

C D E F
平行進行(キーを無視してスライド)

ダイアトニック並行進行はカデンツを無視するものの、コードの動きが機械的な規則正しさを持っているのでちゃんと音楽的に聞こえます。

マイナーキーについても同様です。途中からでも何小節からでもかまいません。自分なりに2度ずつ上行、4度ずつ下行など工夫したり、和音にadd9や6コードを加えたりして変化をもたらしましょう。

たまたまカデンツに沿った進行になることもありますが、規則的な音程幅を持ってコードが変化することが面白さの神髄です。カデンツのみのコード進行に行き詰まったとき、マンネリの打開策の一つとして使いましょう。

参考・出典

・「作曲基礎理論 〜専門学校のカリキュラムに基づいて〜」 井原恒平 (Amazon)