ドラム演奏:フィルイン(オカズ)とは曲の区切りを示す大切な要素。

ドラムは楽曲の中で区切りを示す重要な仕事があります。実際のドラム演奏では基本パターンの繰り返しに終わらず、全く違うパターンの演奏を間に挟み込むことによって、聴く人に区切りや新たな始まり、ブロックのまとまりを伝える事ができます。

ドラム演奏のフィル・イン(オカズ)とは

ドラムの基本パターン以外の異なったパターンのことをフィルイン(通称オカズを入れる)と言います。基本的なパターンに反した動きをすることが原則となります。フィル(fill)とは英語で埋めるということ。曲の区切り、間と間を埋める為のパートです。

オカズのパターンが現れるのは大小様々な単位ごとの最後の小節になります。小さなまとまり単位になればなるほどオカズを入れて区切りを示す必要はなくなるため、大きなまとまりやブロックの最後に区切りを示すために使われます。

ポピュラー音楽は区切りをフィルインで分かりやすく丁寧に聴く人に伝える工夫が凝らされています。一方でクラシック音楽では意図的にどこからどこまでが区切りかわかりにくいようにしています(バッハなどのスルメ的音楽では何度も聴いてようやく区切りがどこにあるのか分かったりします)。

要するに、境界や区切りを示す為にはいつもと違う事をすれば良いということになります。また、区切りを示すのに使う楽器はドラムスに限らないことも頭の片隅に入れておきましょう。

区切りを示すフィルイン(オカズ)をパーティーに例えると…
小規模← うちあげ 〜 週末パーティー 〜 年明け 〜 100年(ミレニアム明け) →大規模

フィルインの実体

フィルイン(オカズ)はあくまでも区切りと密着していなければなりません。小規模なものは小節の終わりの方にしか登場できず、区切りからみて大きなまとまりを持つブロックはオカズも長いものとなります。オカズの後に基本ビートを鳴らすとオカズ(フィルイン)の効果はなくなります

エイトビートの中で16ビートのリズムも可能ですが、実際に演奏するときに別の楽器を演奏するのが難しくなるため基本的には無いものとして考えます。

■ハイハットによる小規模なオカズ
ハイハットのパターンを変えるだけで簡単にオカズを作れます。基本ビートを鳴らすハイハットがクローズドだけで構成されている中で、それをオープンで鳴らすように変化させるパターンです。元々のビートの中にオープンが入った場合だオープンも基本ビートの一部だと捉えられ使えません。

■スネアドラムによるオカズ
普段鳴らないタイミングでスネアを登場させるだけで基本パターンとは異なる状態である事を示すことが出来ます。その場合は一定の符割りを持った連打のパターンを前提とします。また、基本パターンのタイミング冒頭にスネアが登場した場合でもオカズとして捉えられます。

■ハイハットとスネアによるオカズ
スネアとハイハットの両方が絡んだものですが、オープンハイハットの後にスネアのフィルやスネアのフィルの後にオープンハイハットなど明確に両者を独立させたものとなります。どのような楽器にも楽器の構造上の特徴から明らかに演奏しにくいものはフレーズとして不自然なものとなります。

■オカズの規模とクラッシュシンバル
本来登場するべきタイミングでフィルインが入らない場合、幅0のフィルインと考えることができます。オカズの必要性はオカズの占める幅に比例し、各箇所ごとのフィルインの相対的な大小関係はブロックの規模によって決まっています。

最も小さいフィルインは、最後の拍の裏で半拍分だけ鳴るハイハットになります。実際の大小関係は理論ほど明確ではなく、どこが区切りでひとつなぎをしたいかアレンジャーの意向でオカズのあるなしが決まることもあります。

言い換えればフィルインとは小節の境目、次の小節の1拍目へ向かって収束していく流れのことです。そのためその収束点に強いアクセントを持たせてやる必要があります。例を出せば規模の大きなオカズ直後の1拍目にはよくクラッシュシンバルが用いられます。

大きな区切りにシンコペーションを含ませることもあります。

楽器種別のオカズの持たせ方

■スネアとバスドラムのオカズ
フィルインとして認識されるためには基本パターンと明確に異なっていることが必須条件です。スネアとバスドラムのコンビネーションでも登場タイミングを調整することでオカズとして成立させることが出来ます。

実際に運用する場合はバスドラムが登場するはずの強迫にスネアを登場させるという形から入ることしか出来ず、半端なリズムサイクルで基本パターンと認識させない工夫が必要です(1拍や2拍で登場させないなど)。

■タム類とオカズ
タム類の楽器は大規模なオカズに欠かせない要素です。ドラムセットにより数は異なりますが、3つが通常でしょう。実際のプレイを考え連打されることもあるので、スネアとタムを基本として考えます。

複数のタムを連続して演奏する場合、物理的な条件から高いタムから低いタムへと流れるように繋いで演奏します。

16分音符までは標準的な細かさなので連打も可能ですが、楽器を替える瞬間の移動を考えると隣同士ではないタムの連続は困難です。しかしその場合でも一つでも休み(休符)を入れれば演奏可能です。

演奏者のことを考慮すると、隣同士の楽器へ映るときも両手を交互に使って演奏するために右手を使った直後に右の楽器へは移れません。従って16分音符の連打でタムを叩く場合は叩きはじめの楽器は左手から演奏すれば奇数も可能ですが、それ以降は偶数に限定されます(こちらも一つ分休みを入れれば奇数が可能となる)。

フレーズの切れ味という観点からかなりアップテンポの曲以外はそれぞれのタムでは4回以上連続しない方が無難です。

フィルをカッコよく響かせるために

上記のことを守っても、カッコよく聞こえないフィルがあります。原因はオカズ全体の幅や楽器チェンジのタイミングなどが整然として、全体としてオモテのアクセントが強調されてしまっているからです。(コミカルに聴こえる)

カッコよいフィルを作るには、ウラのアクセントを意識して強調してあげましょう。ウラのアクセント、リズムを強調することが格好良い響きにつながります。

ポピュラー音楽は時代によってフィルインの流行り、廃りがありますヘビーメタルは時代にかかわらずフィルインが多用されています。上がっていこうぜ!のような気分を高揚させるゲームの戦闘シーンの音楽などでもフィルインは使われます。ハードロックは音を歪ませていきます(ディストーション。時代が進めば進むほど歪み度合いも大きくなる)。

ちなみにR&Bは大人向けのしっとりとしたリズムで一定のリズムを保つためにフィルインは控えめで目立たないものとなります。映像向けの音楽であれば、青空の下に拡がる自然、大気、雲などがフィルインが使われる事の少ない音楽です。

ジャンルによってフィルインの使われ方が違うので普段から曲の区切りを意識して聴いてみましょう。