これまでメジャースケールとナチュラルマイナースケールを扱ってきましたが、今回はナチュラルマイナーから派生したハーモニックマイナースケールを扱います。
ハーモニックマイナースケール/和声的短音階
ナチュラルマイナーに導音が無いことは当時の音楽家を悩ませました。導音が無いということはコード進行が均等で、山場のない平坦な曲しか作れないことになります。そのためナチュラルマイナーは暗いと言っても淡々とした淡い感じの暗さしか表現する事が出来ません。スケールの第7音の導音と主音が半音関係であることが曲に終止感をもたらします。そこで、当時の人はナチュラルマイナースケールの第7音を半音変化させることで導音を持つマイナースケールを人工的に作り出しました。これがハーモニックマイナースケール(和声的短音階)です。ハーモニックマイナースケールは長調のような完全な終止感を得るために開発された音階なのです。
■ハーモニックマイナーのインターバル
ハーモニックマイナーのインターバルは「全音・半音・全音・全音・半音・増2音・半音」(P1,M2,m3,P4,P5,m6,M7)です。ナチュラルマイナースケールの第7音を半音上げて、メジャースケールの時と同じ音に戻していますね。A-HMなら「ラシドレミファソ#ラ」となります。
このハーモニックマイナースケールのおかげでマイナースケールにも長調のような終止感を得ることに成功しましたが、今度は6番目の音と第7番目の導音との関係が「増2度」という気持ち悪く、歌いにくい音階になってしまったために、この違和感を解決すべくメロディックマイナースケールが生まれます。ちなみに音飛びの感覚、スケール内での不均等さ(クセ)が増すにつれてエスニックな印象を持つようになります。ハーモニックマイナーも6度と7度の間の2つ飛ばしの箇所はちょっと異国風な感じを受けます。
ハーモニックマイナースケール/和声的短音階一覧
以下ハーモニックマイナースケールの一覧をまとめます。
■Aハーモニックマイナー「ラシドレミファソ#ラ」
■A#ハーモニックマイナー「ラ#シ#ド#レ#ミ#ファ#ソ##ラ#」
■B♭ハーモニックマイナー「シ♭ドレ♭ミ♭ファソ♭ラシ♭」
■Bハーモニックマイナー「シド#レミファ#ソラ#シ」
■Cハーモニックマイナー「ドレミ♭ファソラ♭シド」
■C#ハーモニックマイナー「ド#レ#ミファ#ソ#ラシ#ド#」
(D♭ハーモニックマイナー「レ♭ミ♭ファ♭ソ♭ラ♭シ♭♭ドレ♭」は元の調にダブルフラット「♭♭」があるため調号では示せない調です。)
■Dハーモニックマイナー「レミファソラシ♭ド#レ」
■D#ハーモニックマイナー「レ#ミ#ファ#ソ#ラ#シド##レ#」
■E♭ハーモニックマイナー「ミ♭ファソ♭ラ♭シ♭ド♭レミ♭」
■Eハーモニックマイナー「ミファ#ソラシドレ#ミ」
■Fハーモニックマイナー「ファソラ♭シ♭ドレ♭ミファ」
■F#ハーモニックマイナー「ファ#ソ#ラシド#レミ#ファ#」
(G♭ハーモニックマイナー「ソ♭ラ♭シ♭♭ド♭レ♭ミ♭♭ファソ♭」は元の調にダブルフラット「♭♭」があるため調号では示せない調です。)
■Gハーモニックマイナー「ソラシ♭ドレミ♭ファ#ソ」
■G#ハーモニックマイナー「ソ#ラ#シド#レ#ミファ##ソ#」
■A♭ハーモニックマイナー「ラ♭シ♭ド♭レ♭ミ♭ファ♭ソラ♭」
ハーモニックマイナーはナチュラルマイナーの第7音が半音上がり、主音と半音関係であることがわかります。