【楽器法】クラリネット(備忘録的メモ)

今回はクラリネットについてのまとめです。クラリネットは移調楽器の王様と言われています。学習者のメモなので適宜ご参考までに。

クラリネットとは。管の長さの違いで多くの兄弟楽器を持つ。

1700年頃に、今のクラリネットの原型が出来たと言われています。クラリネットはたくさんの兄弟楽器が存在しています。その数はなんと11種類以上で、クラリネットは最も兄弟が多い楽器といえるでしょう。クラリネットはなぜ移調楽器があるのかを教えてくれる楽器です。その理由は楽器の長さが違うからです。長さが違う事で同じ運指でも出てくる音が違ってきます。

たとえば、誰もが義務教育で習うリコーダーを考えてみましょう。リコーダーの演奏は指を順番に離していくだけでドレミファソラシドが簡単に弾けますが、こうした楽器は#,bが出てくると弾くのがめんどくさくなります。どうしてこんなにたくさんあるの?という運指の数に圧倒されるでしょう。

一つの運指で#bを弾きたいと演奏者は思うものですが、楽器が進化していく過程の中で管はどんどん長くなっていきました。それと同時に兄弟楽器も管の長さの違いでドンドン増えていきました。これはすべての楽器の構造に当てはまりますが、楽器が大きくなるほど低い音、小さくなると高い音が出るようになります。クラリネットは臨時記号を弾くのが大変なため、楽器の方が移調しました。

作曲する時もなるべく#とか♭が出てこない運指が望ましいとされます。ただ現在は奏者の演奏技術の向上でこうしたことは関係なくなっています。また、すべてB♭管のクラリネットで済ませる場合もあります。現代になるにつれて、転調、臨時記号が多くなってきたので演奏者のスキルが求められるようになってきましたが、学生が演奏する吹奏楽は演奏しやすいBb系の楽曲ばかりです。

奏者にとって楽器を二つ持つのは負担です。特に吹奏楽は、歩きながら演奏することもあり、移調楽器を何本も持つのは負担になります。現代はキーシステムの改良でBb管だけですべて演奏する時代になったといえます。

音楽が複雑になっていくのは時代の流れですが、管によって#系♭系の楽曲だけど運指が簡単で弾きやすい場面もあります。移調楽器は作曲家としてはめんどくさいし、負担な要素だけれども考慮しなければなりません。

クラリネットの管について

ただのクラリネットというと、Bb管のクラリネットを示します。Bbメジャーキーを吹くのが一番簡単だからです。F#メジャーは#4個のキーにですが、シャープが出てくると運指として半分開けや二個飛ばし、一個飛ばしなどややこしくなります。親指を半分開けで一個飛ばしの指づかい等同じ曲なのにキーが違うだけで演奏の難易度が大きく変わります。

難易度は曲によります。Bbメジャーでも難しい曲あるかもしれないし、Eメジャーでも優しい曲があるかもしれません。

基本的に奏者の指使いが複雑とならないように管を選びますが、現代は借用和音などを使うようになって、#やbといった臨時記号がつく楽曲が増えたためそれも関係なくなってきました。楽曲の難しさは高まってきているので、どの管で演奏するにしても難易度は大体同じになります。ブルックナーの曲に見られるように、複雑な音遣いになると管の運指の違いは関係なくなるのです。

A管、Bb管はベートーヴェンの時代のクラリネットの曲によく使われていました。なお、CメジャーのC(ツェー)管もあります。C管はあまり普及していないのは、音が悪いからです(丸みのある音がします)。管が小さくなると、良い音が出ません。管が長い方が音が豊かになります。

クラリネット音の特徴

クラリネットの音色の特徴は、音が高くて通る感じです。過激なくらい倍音が出ます(だから音が丸いC管は普及しなかった)。クラリネットは音域についての理解が特に大事になります。

クラリネットの音域

シャルモー音域
曇ったような感じがします。基音ベースの音域です。クラリネットの高音域は、作曲家によって好き、嫌いがあります。例えばブラームスの使い方を見てみると、オーボエよりも低いところでフルートを使っています。これはブラームスがクラリネットの高音域の音色が好きではなかったことを示唆しているといえます。

一方で、ブルックナーはブラームスとは当時ライバルでしたが、フルートでいう高い音域にまでクラリネットを使っています。ブルックナーはブラームスとは違い、クラリネットの高音域の音色が好きであったといえるでしょう。

どの音域でクラリネットを使うのかは完全に好みの問題となります。ちなみにブルックナーはブラームスと同時代とは思えないほど現代的な和音と転調が特徴です。

クラリネットの奏法

クラリネットは運動性が高い楽器で、フルートに匹敵するぐらい動ける楽器です。クラリネットはかなり長いレガート、スラーに対応できます。レガートの可能性と指使いの可能性を意識してみましょう。クラリネットは息を吹きつつ、指使いを変えていく楽器です。スラーのところは息を吹き続け、指使いだけを変えていきます。

クラリネットはオーボエに匹敵するくらい早く演奏できる楽器です(オーボエよりはさすがに鈍いですが)。

トレモロも良好で、常識的なトリルの範疇に収まるトレモロ奏法であるならば、なんでも対応可能な楽器です。ファゴットなどでは運指が複雑な場面は避けなければならない時もありますが、クラリネットならば対応可能です。

クラリネットは、強弱の広い幅に対応した楽器で、とても小さい音(弱い音)が出せる一方、力強い音まで出せます。この特徴はオーボエにはできない、クラリネットができることの特徴になっています。速度も速いため強弱が出しやすいのです。

また、本によっては発音されないと記述されることもある偶数倍音はちゃんと出ています。偶数倍音の成分は少ないけれども存在しており、丸みのある音が出せます。そのため、オーケストラの背景(壁紙)として徹する役割もありです。音に丸みがあるので、キャラが立つような音の使い方もできます。

バスクラリネットについて


低音部を担当するのがバスクラリネットです。

バスクラリネットはソプラノの1オクターブ下の音域を担当します。低音をオーケストラに提供するベースのような存在です。バスクラリネットよりも更に1オクターブ低いのはコントラバスクラリネットと言います。

バスクラのソロはB♭管を使います。A管もあるらしいですが、ほぼ見ません。こちらも現状二本持ちがなくなっていて、Bbメジャーキーが一番簡単に演奏できるという理由からB♭管が主流となっています。

A管(あーかん)のバスクラリネットはあるらしいですが使われることはほとんど無く、全部B♭管(べーかん)で演奏することが多いです。Aメジャーの曲でもA管を使わずに、Bb管でAメジャーKeyの曲を演奏するということです。

吹奏楽ではよく見かける楽器ですが、普段はあんまり目にすることはありません。

クラリネットの上部吹奏

シャルモー音域:シャルモー音域は他の楽器には出せない個性的な音色を出すことが出来ます。音域上部に向かうにつれてその性質を失います。シャルモー音域の名前はシャルモーというクラリネットの源流となる楽器があったことに由来しています。シャルモーは暗く脅かすような音として用いられます。

クラリネットの楽器の構造を考えていくと、円錐閉管楽器となります。円錐閉管楽器は奇数偶数倍音両方とれるのが特徴です(これが円柱閉管だと構造の問題で、2倍音、4倍音が得られなくなります)。閉管楽器は吹いた空気が全部入っていかない構造となっています。入り口から空気が漏れる構造を持つものは開管楽器といいます。こちらは偶数、奇数の倍音を両方とれるのが特徴です。

倍音はちょっとは出ています。クラリネットでも偶数倍音は得ることはできますが、2倍音、4倍音が少なくなっています。少量ながら偶数倍音が出ているため丸みがある音となっています。

基音と倍音の変わり目を意識しましょう。クラリネットは偶数倍音が苦手で、最初に得られる倍音は3倍音です。

クラリノ音域(クラリーノ音域):シャルモー音域より上はクラリノ音域(クラリーノ音域)といいます。3倍音より上で、キラキラ輝く音です。クラリネットの音域は下はフルートの1オクターブ出て、上はフルートと同じぐらい出るぐらい出るのでとても広いです。

その他

楽器のノドの音はブレイクといいます。楽器構造で言う穴がない狭い頭の部分です。指を離していくと、使う管が短くなっていきます。全部離すと、喉のあたりまでしか使わないです。特徴は音が痩せた感じになり、運指がガラッと変わります。

たくさん押さえるような運指になるので、ラ#とシの切り替えにトリルを持ってくるのは奏者としては大変になります。ただ、それをうまくこなすのがクラリネッターの仕事ともいえます。

倍音が変わり、音も変わると発音原理も変わります。現代は積極的にわざとやりにくい、運指の切り替え(ブリッジ)のところを攻めた楽曲もあります。

また、基本形のクラリネットより4〜5度高い音を出すピッコロクラリネットはラヴェルの「ダフニスとクロエ」で使われているようです。

参考動画


同じクラリネットなのに、別の楽器みたいですね。