音をただでたらめに配置するだけでは整合性のない音楽になってしまいます。すべての創作物は、普通はこういう流れになるはずだ、という基準を感じさせることで受け入れられることが出来るのです。音楽の世界にもある程度一定した世界観が必要で、その土台となるのがスケール(Key,調性)です。調性感を感じさせるということは、音楽という世界で「普通はこうなる」という基準や必然的な流れを作り出す過程だと言えます。
スケールは音楽の世界に秩序をもたらす存在
機能和声でいえば、I度の音を基準にして完全5度の音、完全4度の音は頻繁に使われます。この時点でIの音はその音楽における世界の中心的な役割となり、協和性の高い順にランク付けされます。音という抽象的な世界でも、頻繁に使われる音、協和している音、使われない非協和の音などで序列が出来、役割や秩序が生まれていくのです。中心となる音は主音と呼ばれ、世界の各地域で様々なスケールといわれる音列を作っていきました。これは単に、「この音とあの音は相性が良い」、「あの音はこの音と相性が悪い」という感覚で、長い時間をかけて構成されていきました。スペインのジプシースケールや沖縄のヨナ抜き音階など地域によっても差(個性)が生まれています。
ヨーロッパではメジャースケールとマイナースケールに音列が固まっていきました。音列とその主音や他の音同士の関係性は調性と呼ばれ、聴き手には一つの舞台、小宇宙として感じられるものとなります。
作曲においてどの調を使っているのか、言い換えればどの音を主役(主和音、主音)とした音遣いをしているのかを意識して判別することが重要です(まるで舞台芸術のように)。
主音とスケール上の音について
主音は安定感、落ち着き、平和をといった聴覚的感覚をもたらします。一方で、もっとも不安定なのがスケール上の第7音です。第7音は半端で未解決な感じを強く出します。最も立場が弱く、不協和な音なので、横となりの主音に繋がることを期待する性質から導音と呼びます。
スケール上の第5音は属音と呼ばれ、調性感の確立のために主音の次に重要な音となります。主音との間に完全5度音程という協和性の高い音をもっていることもそうですが、協和性の高い音をつなぐ、主音への橋渡しとして主音に繋がる動きは納得性の高いものとなります。
第4音は属音の一つ下の音なので下属音と呼ばれます。これも主音とは相性の良い完全4度音程を持ち、属音の次に調性にとって大切な音となります。