ナポリの和音(Neapolitan chord)とは、18世紀頃イタリアのナポリの地域を中心に活躍したオペラ作曲家たちが好んで活用した和音のことです。ナポリ楽派と呼ばれた作曲家たちが用いた和音はナポリの6度としてクラシックでは広く知られています。
ナポリの和音の基本原理:♭II、♭IIM7
ナポリの和音はローマ数字のディグリー表記だと♭II、♭IIM7となります。ナポリのII、ナポリの6度などの呼び方があります。ポピュラー理論ではサブドミナントマイナーと一括りにして扱われている事が多いです。ただ、同主短調のダイアトニックコードには存在しない一種の変化和音となっています。変化和音とは、クラシック音楽の用語でコード・トーンの一部が半音単位で変化した和音のことをいいます。
マイナーキーにおけるIIm-5の根音が半音下に変化した和音がナポリの和音です。
Dm-5 → D♭(ナポリの和音)
第3音が一番下に転回した形が最もよく使われる用法です。
D♭/F
これは、第3音と根音が6度の音程を作り出すからで、ナポリの6度の名称の由来となっています。
18世紀のクラシックまでは次に進むコードはドミナントであるのが普通でしたが、現代ではもっと自由に制限無く使われています。
カデンツ上の機能としては、サブドミナントになります。
クラシックでは厳密な用法が指定されていますが、実際には制限無く自由に使えます。ポピュラーでは4和音も使いますし、本来はマイナーキーで使われるのですがメジャーキーでもトニックに進むのでもOK、違うサブドミナントコードに進むのでも自由です。
♭IIM7のコードがナポリの和音であり、裏コードの♭II7と形が似ているので注意が必要です。
ナポリの和音の使い方
先に述べたとおり、ナポリの和音は本来ならマイナーキーで使いますが現代の自由な用法ではメジャーキーで使用しても大丈夫です。非ダイアトニックコードであるにも関わらず、ダイアトニックコードのように美しく響くのが特徴です。
ポピュラー音楽ではナポリの和音の後にトニックコードに続くことが多く、ナポリの和音のM7はそのキーの主音なので、上手に使うことで主音を維持したコード進行やメロディが作れます。メジャーキーで使うとサブドミナントマイナーに近い響きをもたらします。
■ナポリの和音で使えるコードスケール
ナポリの和音で使えるコードスケールはリディアンスケールとなります。ナポリの和音の主音から見た完全5度上のメジャースケールで使うコードは♭II,♭IIM7です。非ダイアトニックコードですが、主音と属音の音を含んでいるため調性は安定しています。