sus4(サスフォー)コードについて

sus4(サスフォー)コードについて

今回はsus4コードについて扱います。sus4のsusとはsuspendedの略で、つるされたという意味です。メジャートライアドの第3音が一時的に半音上に吊されているという意味です。

sus4コードの特徴

sus4コードはとても美しい響きを持っています。sus4コードが好きな作曲家もとても多く、sus4コードには独特の浮遊感や神聖な感じがあります。RPGの名作「クロノトリガー」でデビューし、ゼノギアスやクロノクロスといった作品で有名な光田康典さんもよく多用しているコードです。

sus4のコードスケール

マイナーコードにはsus4はありません。IM7sus4も使用可能ですが、sus4とM7の間にドミナントの和音に見られる3全音(トライトーン)が生じてしまうため、一般的には用いません。

sus4とテンションを組み合わせたものも多く存在します。

マイナーキーではVmをVに出来るのでV7のドミナントコードをsus4化できます。マイナーコードにsus4はないのでVmsus4はありません

オルタードスケールのように、sus4を担当する音自体がないコードスケールはsus4コードを使用できません。
ドリアン、フリジアン、リディアン、ロクリアンのコードスケールではsus4コードは存在しません。

sus4はアイオニアン系、ミクソリディアン系のスケールで使えるコードとなります。メジャーキーではIとV、マイナーキーなら♭IIIと♭VIIのディグリー上で使うコードとなります。

sus4におけるコードスケールはアイオニアンとミクソリディアンが基本です。Isus4の時はアイオニアンを使用しますが、sus4がコードトーンとなり、第3音は10thというテンション扱いとなります。

Vsus4,V7sus4の時はミクソリディアンを使用します。メジャートライアドでは第4音はアボイド扱いでしたが、sus4では第4音がコードトーンになり、第3音はテンション扱いとなります。ミクソリディアン♭6やHMP5B、スパニッシュ8も同じようにsus4がコードトーンになり、第3音は10thテンション扱いとなります。

sus4コードの使い方

sus4コードの最も一般的な使い方はIやVをsus4化して、V7sus4→V7のような流れで用いる方法です。

もともとsus4コードは浮遊感のある響きを持っているので、その吊るされた音が元のコードに解決して落ち着く感じです。このような一時的に吊されたsus4の音が、元の形に戻る時のことを解決するといいます。

別の言い方をすれば、一つのコードを二つのコードにsus4を使って分割し元のコードに解決するのが一般的ですが、近年はsus4の独特な響きを持ち込むために解決されないsus4を用いる作曲家も出てきました。sus4の響きの美しさを前面にもたらし、あえて解決しない場合です。

G7sus4→C
の進行の場合は厳密には全3音がなくなるのでドミナントモーションとは言えませんが、最近のポップスには多く含まれます。

発展的に、ダイアトニックコードから抜け出してメジャートライアドで形成されたメジャーコードであれば何でも自由にsus4コードを使う作曲家も存在します。

sus4と第3音は同居できる

ポピュラー系の理論書に、メジャートライアドの時はsus4がアボイド、sus4の時は第3音がアボイドとなる記述がありますが、実際にはsus4の時の第3音は短9度の音程が発生しないため、アボイドとはなりません。

Cの時にファがアボイドととなるのはミとの間に短9度音程があるからです。ところが、Csus4の時はどこにも短9度は発生していません。ファとミに出来る音程は長7度です。sus4の時に出来る第3音のテンションを10thとして扱い、クラシックの後期ロマン派、近年のジャズには比較的多く見られます。

発展的なsus4の用法 テンションコードにおけるsus4とコードスケール

オルタード化されたテンションコードにおけるコードスケールとsus4についてです。元々のコードスケールにsus4の音がある場合はsus4化することができます。

・フリジアンスケール sus4化した○7 ♭9th,#9th,♭13th(長3度下のメジャーキー)
♭9th,#9th,♭13thのオルタードテンションを持つsus4化されたドミナントセブンスコードはフリジアンを使うことが出来ます。G7における第3音がなくなって、代わりにsus4の音があります。HMP5Bよりもフリジアンを使う場合は第3音とsus4の半音ぶつかりもないので、とてもきれいに響きます。この場合のフリジアンスケールは、sus4の音をきれいに響かせるのに特化したスケール選択となります。

・ドリアン♭2スケール sus4化された♭9th、#9th、13thの場合(長2度下のメロディックマイナー)
♭9th、#9th、13thのオルタードテンションを持っているドミナントセブンスコードがsus4化した場合、ドリアン♭2スケールを使うことが出来ます。ドリアン♭2スケールはメロディックマイナー出身で、メロディックマイナーの2番目の音を並び替えたスケールになります。

フリジアンスケールとの違いは13thがオルタード化しているかどうかで、♭2の音が13thというナチュラルテンション(元のキーに含まれている音)となっているので響き的には元のキーに近くなり使いやすくなります。これらのフリジアンもドリアン♭2スケールもsus4専用なので、第3音が出てこないように注意する必要があります。

・ロクリアンスケール sus4化した○7コード ♭9th,#9th,#11th,♭13th (短2度上のメジャーキー)
ロクリアンスケールはかなり特殊なドミナントセブンスのsus4コードに使えるコードスケールです。♭9th,#9th,#11th,♭13thのオルタードテンションを持っているsus4化されたドミナントセブンスコードで使えますが、短2度上のメジャーキー出身のコードスケールのため、かなり外れた感じが強いコードスケールです。

異名同音が多くなり、複雑になりますが、自分なりに音の解釈や役割をどうするのかを決めておくことが重要です。出身キーを意識してそれに合わせてもいいでしょう。

参考・出典

・「作曲基礎理論 〜専門学校のカリキュラムに基づいて〜」 井原恒平 (Amazon)