前回音程の項目で異名同音(同じ音で違う名前の音)を扱いましたが、これらは音として鳴らして聞くと同じ音です。ですが、理論では”同じ音”として扱いません。これはなぜなのでしょう?
目次 index
平均律と純正律
その答えは、調律にあります。現代の鍵盤楽器は12平均律という全ての半音間を均等に分割する方法が主流です。これによって、全ての調を均等に扱うことができ、あらゆる楽曲を移調することで全ての調での演奏ができるようになっています。
しかし、12平均律には欠点もあります。全ての音を均等に綺麗に聞こえるようにしているため、一部の和音の美しい響きを犠牲にしているのです。12平均律が登場する前は純正律、ヴェルクマイスター、ミーントーン、ピタゴラス音階など今では使われない調律が使われていました。
純正律は主要和音の響きの美しさを追求した調律であり、その代わり移調や転調に制限があります。純正律ではCメジャーキーにおける第3音の「ミ」とDメジャーキーにおける第2音の「ミ」のピッチが異なります。そのため、同じ音名ですが実際の音のピッチがわずかに違うため、平均律で鳴らすと同じ音でも理論では違う音として扱うのです。
他にも作曲家によって、盛り上がる曲は#を使ったり、静かな雰囲気を出したいときは♭を多用したり、同じ音を持つ調でも使い分けたりすることもあります。異名同音は単純に同じ音で違う名前を持つだけとは考えず、その成立の過程から理論では違う音として扱うのだ、と覚えておきましょう。
参考動画資料:純正律
臨時記号の使い分け
コードに付ける「#」や「♭」などの臨時記号はどちらを使えば良いか迷う時もあると思いますが、音さえ合っていればどちらでも構いません。
基本的には以下の方針に従うと良いでしょう。
1,ルートの記号に合わせる
例えば「D♭」というコードを書きたいときは、まずルートは「ド#」ではなく、「レ♭」と書くのが自然です。ルートに「♭」がついているので、「♭」を中心に構成します。
2,スケールの並びに合わせる
音階=スケールの並びに合わせる形に表記します。Cメジャーであれば「ドレミファソラシ」なので、コードもそれに合わせる形で表します。「Cm(-5)」ならば「ドミソ」を基本に考え、「ド、ミ♭、ソ♭」と考えます。「#」を使って「ド、レ#、ファ#」と書くこともできますが、「#」を使った場合は1度,2度,4度を考えているような錯覚が出るので、スケールの並びと度数に沿った臨時記号を付けることが自然になります。
3,臨時記号は出来るだけ付けない
臨時記号は出来るだけ付けない方がスッキリします。スケールの度数に沿って考えると「ミ#」や「ド♭」など出てくる時もありますが、「ミ#」「ファ」、「ドb」は「シ」のように、臨時記号を付けない書き方が出来る時は出来るだけ付けない方が読みやすくなります。
しかし、#で盛り上がり、♭で静かな雰囲気を作りたい、といった作曲に明確な意図がある場合は別です。しっかりと配置する音の意味を考えて作曲をしていきましょう。